芸人→最弱プロレスラーの異色経歴で…なぜ下関に“ベイスターズの店”を? あるファンの数奇な人生「若い子は下関で生まれた球団だと知らないんです」
若い子は「下関で生まれた球団だと知らない」
毎年一度はやっていたオープン戦も2006年を最後に弱すぎて顔向けできなくなってしまったのか、すっかりと足が遠のいてしまった。その代わりに、隣県の人気球団カープやホークスのファンが勢いを増し、ホエールズ・ベイスターズのファンは「おじいちゃんの世代ね」と断じられる体たらく。 「ホエールズ発祥の地と言ってもね、小学生がマルハの工場見学で高木豊の下敷きを貰うだけじゃファンにはならないんですよ。大洋を、ベイスターズを身近に感じる機会がないと継続的にファンは続けられない。今の下関の若い子はDeNAが下関から生まれた球団だということも知らないんです。これは何とかしないといかん……と、ない頭をしぼって考えていたんです」 そんな時、下関にベイスターズが帰って来るというニュースが飛び込んできた。球団創設70周年にあたる2019年3月10日、DeNAとなったベイスターズが『70th ANNIVERSARY PROJECT』としてこの下関でオープン戦を行うことが決まったのだ。 実に13年ぶりとなる下関開催。前日から多くのベイスターズファンが横浜から乗り込み、駅前商業施設では最後の下関開催があった2007年時の監督、大矢明彦さんを招いて前夜祭が行われるなど、大変な盛り上がりを見せた。 「ああ、この熱があれば下関のベイスターズ熱復興のきっかけになるのでは」と期待は膨らんだが、翌日は朝からクジラ1000頭が同時に潮を吹いたかのような土砂降りで即中止。早朝から駆け付けた南場智子オーナーや高田繁元GMなども中止を惜しんだが、ベイスターズの下関開催は幻となり、以来現在まで一軍戦は行われていない。
下関でベイスターズファンが集まれる場所を作りたい
「あの時、横浜から来たベイスターズファンの人たちと何人も仲良くなって、下関を大事にしてくれていることを改めて知ったんです。そこで目覚めてしまったところはありますね」 下関に帰ってベイスターズファンが集まれる場所を作りたい。誰もやらないなら、俺がやるしかない。 「普通は居酒屋で言うだけ言って盛り上がる類の話。本当にやるやつはいないと思いますけど、バカだから本気になってしまって。最初に上田中町の『竹つぼ』さんに相談したんです。子どもの頃から食べに行っていましたし、下関の飲食業界の現状とかも聞きたかったんです」 子どもの頃から知っているおじさんは、ヤングの「ベイスターズの聖地の灯を絶やしたくない」という熱い思いを聞くと、何かを感じたかのように深く頷き、店の裏から「これを持って行け」と、銅像と大きな旗を渡してくれた。 旗には「マルハ」と書いてあった。そう。おじさんは、かつて大洋漁業の漁船に乗っていたのだ。この旗はその船に掲げてあった本物の大漁旗。そして、銅像は大洋ホエールズ球団を生んだ中部幾次郎氏の御姿だった。 「おまえのような若者が出てくるのを待っていた。下関にタイヨウを取り戻せ」 タイヨウの勇者・ヤングは伝説の大漁旗と、この世に7つ散らばるという中部一族の銅像とを引き換えに、自分がもう元の世界に引き返せないことを悟った。 <後編につづく>
(「野次馬ライトスタンド」村瀬秀信 = 文)
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