不幸な結婚生活は命をおびやかす 認知機能や免疫力も低下
結婚とは、生涯を通じて貫き通すべき誓いだ。しかし、憤りを募らせたり、食い違いを放置したりする状態を繰り返していると、健康に計り知れない影響が及ぶおそれがある。たとえ始まりは愛や希望に満ちた関係だったとしても、こじれた問題をそのままにしておけば、不幸をもたらす関係へと変質しかねない。 争いに次ぐ争いで破綻した結婚生活は、精神的に苦痛であるだけではなく、健康にも深刻なリスクとなる。対立によって生じた慢性的なストレスと不安が、身体的にもメンタルヘルス的にも永続的な影響を及ぼしかねないのだ。 不幸な結婚が健康にもたらす3つの影響を説明しよう。 ■1. 健康リスクが増大 2021年に臨床医学ジャーナルに発表された研究論文によると、結婚生活に不満を抱いている男性は、満足している男性と比べて脳卒中のリスクが94%とほぼ倍増するほか、原因を問わず死亡リスクが21%上昇する。 この研究では、30年間にわたる追跡調査で、不幸な結婚生活による悪影響は長く持続し、健康を大きくむしばむことが明らかになった。 夫婦が絶えず対立して緊張状態にあると、ストレスホルモンが放出される。それが血圧と心拍数の上昇を引き起こし、ひいては高血圧症や心血管疾患などの慢性疾患の発症につながる可能性がある。 健康と社会的行動に関する学術誌Journal of Health and Social Behaviorに2014年に発表された研究結果では、結婚生活の質の低さと心血管疾患リスクの上昇に関連があることがわかった。特に高齢女性で高い関連性がみられ、男性よりも女性のほうが破綻した結婚生活による健康への悪影響がのちのち強く出るという。 男女ともに、結婚生活の質は、健康的に生活できるか否かを予測する上での重要な指標だ。夫婦関係が悪ければ、時間とともに深刻な健康問題を抱えたり死亡したりするリスクが大幅に上昇していく。 ■2. メンタルヘルスへの悪影響 「夫婦間の対立がとりわけ健康にダメージを与えるのは、意見が食い違うと敵意をあらわにしたりむきになったりする場合や、同じことで繰り返し言い争って解決しない場合だ」と、米パデュー大学人間発達・家庭科学部のアシスタントプロフェッサー、ロージー・シュラウトは英紙ガーディアンに語っている。 米ペンシルベニア州立大学が行った別の研究では、12年間の追跡調査により、結婚生活の質が良くなかった人は、幸せな結婚生活を送っている人よりも幸福度と自己肯定感が低く、全般的な健康状態も悪いことがわかった。 実際、夫婦仲が悪いまま結婚生活を続けるのは、離婚するよりも好ましくないかもしれない。不幸な結婚にピリオドを打った人は、独身を続けた場合であれ再婚した場合であれ、不幸な結婚を続けた人よりも気分が向上し、人生の満足度も高くなった。