7.7東京都知事選「現職・小池 vs 挑戦者・蓮舫」の選挙戦略を因数分解する!
松田 それと、私は石丸伸二さん(前安芸高田市長)にも注目しています。N国、参政党、ガーシー......過去の選挙を見ると、YouTubeで再生数がある人は集票力があるんですよ。 米重 4月の衆院東京15区補選もそうでした。日本保守党の飯山陽さんが得票率14%(4位)という結果を残しましたが、この数字は選挙前時点の調査結果とほぼ同じ。つまり選挙活動で票が増えたのではなく、もともとこれだけの人が支持していたんです。 松田 石丸さんは市議会との全面対決で人気を博したわけですが、あれが本当に市政のためになったかについては批判も多い。特に、他自治体で議会を尊重しながら必死に政策を実現している若手首長たちからの評価は低いですね。それに正直、都内での知名度はまだ全然足りません。 しかし、それにしてもYouTubeを見ている人の支持率はすごい。自分の体感でも、普段は全然政治の話をしない知人から「石丸さんってどうなの?」と聞かれることが何度もありました。 米重 接触媒体による政治意識の違いは明らかに広がっています。われわれの調査でも、政治や社会に関する情報源としてテレビを使う人と、YouTubeを使う人とでは、小池知事の支持率が如実に異なりました(テレビの人は支持が高く、YouTubeの人は支持が低い)。 松田 さらに注目なのが、"選挙の神様"と呼ばれる選挙コンサルタントのF氏が石丸陣営に入るとか。 米重 え、そうなんですか! 松田 もし蓮舫さんと競るようなら大金星ですし、そうでなくても得票率10%、あるいは70万票を超えれば大健闘です。前回都知事選に出た小野泰輔さん(日本維新の会衆院議員)と同じく、次の衆院選で当選するルートが見えてきます。 米重 もちろん当選を目指して出馬されるというのが大前提にしても、勝ちに等しい負け方というのもあります。蓮舫さんなら、小池さんにどこまで肉薄できるか。200万票を超えるとインパクトがあるでしょうか。 松田 以前から蓮舫さんには衆院くら替え説がありましたし、衆院選に向け立憲・共産票を掘り起こすという意味では、それだけの数字が出れば一定の成果といえるでしょう。 ただ、そうはいっても何が起きるかわかりません。2017年の衆院選は小池さんの「排除発言」で一気に変わりましたし、もしかしたら候補者の誰かに文春砲が炸裂するかもしれませんしね(笑)。 ●JX通信社代表・米重克洋(よねしげ・かつひろ)1988年生まれ。大学在学中の2008年に報道ベンチャーのJX通信社を創業。世論調査の自動化技術やデータサイエンスを生かした選挙予測・分析に加え、テレビ局や新聞社、政府・自治体に対してAIを活用した事件・災害速報を配信する『FASTALERT』、600万DL超のニュース速報アプリ『News Digest』も手がける。著書に『シン・情報戦略 誰にも「脳」を支配されない 情報爆発時代のサバイブ術』(KADOKAWA)がある ●選挙プランナー・松田 馨(まつだ・かおる)1980年生まれ。株式会社ダイアログ代表。2006年以降、地方から国政まで全国300を超える選挙に携わる。現職に挑戦する無所属・新人の依頼も数多く引き受け、勝率は7割超。小池都知事率いる政治塾「希望の塾」講師を務めた経験もある。著書に『残念な政治家を選ばない技術 「選挙リテラシー」入門』(光文社新書)、『フルカラー図解 「地方選挙 必勝の手引」』(選挙の友出版)がある 撮影/五十嵐和博 写真/時事通信社