7.7東京都知事選「現職・小池 vs 挑戦者・蓮舫」の選挙戦略を因数分解する!
――その中で現職とまともに戦える候補の条件とは? 米重 やはり現職に並ぶ知名度。これが大・大前提です。 松田 これがないと、マスコミの期待が集まらない。その点、蓮舫さんの知名度は抜群ですし、先手を打って早めに出馬表明を仕掛けたことは良かったと思います。 米重 テレビに出る露出のタイミングもうまくつくれた感じがしましたね。 松田 ただ、少なくとも小池さんが出馬表明するまでの蓮舫陣営の発信は、もともと小池さんを嫌いな人が喜ぶような話が中心でした。 都知事選は有権者が1151万人いて、仮に投票率が55%なら270万票前後は取らないと勝てない。前回の参院選東京選挙区では立憲民主党と共産党の全得票数が170万強でしたから、立憲・共産票だけでは全然足りませんが、その先の戦略がまだ見えない。 ■「小池のケーキ」を削らないと勝てない 米重 JX通信社の5月18、19日の調査では、小池知事を「支持する」「支持しない」「どちらともいえない」がそれぞれ3分の1ずつくらいでしたが、「どちらともいえない」の中には、強い不満はなくて「支持する」にギリギリ入れてもいいくらいの人が多い。 この数字からも明らかに言えることは、蓮舫さんは「小池不支持層」を固めるだけでは勝てないということです。 つまり、選挙に行く人全体をケーキに見立てると、現時点では半分くらいは小池さんが食べる可能性が濃厚で、残りをほかの候補で分ける構図になってしまう。勝つためには小池さんのケーキを一部取りにいかないといけない。 松田 だからこそ、公約・政策を「小池さんと同時に出す」としたのは悪手だったと思います。確かに地方の選挙などでは、新人が発表した目玉政策を現職が丸パクリして潰しにかかるケースがありますが、このタイミングで小池さんがそれをやるはずがない。挑戦者は先に仕掛けないといけないと思うんですが。 ――一方で、小池知事は5月29日に出馬表明をするとの報道もありましたが、結局6月12日まで引っ張りました。 米重 これからの政策をアピールするというよりも、これまでの実績を問われる現職がわざわざ先に手を挙げるメリットはないと思います。 松田 そもそも、5月29日に本当に表明しようとしていたかどうかも疑わしいですよ。都知事や総理大臣クラスの政治家になると、周囲にいろんな思惑を持つ人たちがいる。 自民党都連が小池さんを支援するかどうかの話にしても、もともと都庁の中には、小池さんより自民党都連に近い人たちがいるんです。さまざまな人がそれぞれの思惑で記者にリークをしているので、実際になってみないと何が本当かはわからないですよね。