ユニファイド・サービス 甲斐博一氏「ストック型マーケティングとストーリー生成ディレクションの実践」
2024年のマーケティングおよびメディア業界は、テクノロジーや市場環境の急速な変化を受け、これまでの慣習や枠組みに頼らない柔軟なアプローチが求められるようになった。7月に発表されたChromeにおけるサードパーティCookie廃止の撤回をはじめ、AI活用が実践フェーズに突入したことでデータドリブンな戦略がさらに重要視されるなど、手法が大きな転換期を迎えたことは明らかだ。 こうしたなか、Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2025」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブにアンケートを実施。2024年をどのように総括し、2025年に向けてどのような挑戦と成長のビジョンを描いているのか、その想いに迫った。 ユニファイド・サービス株式会社で、執行役員 CMOを務める甲斐博一氏の回答は以下のとおりだ。 ◆ ◆ ◆
──2024年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。
2024年を振り返ると、いくつかの不連続的な出来事が我々の前に立ち現れた年だったように思います。より正確に言えば、これまで水面下で静かに進行していた変化が、突如として大きな潮目の変化となって表面化し、社会システムそのものを覆す現象として現れた年と言うべきかもしれません。 特に印象的だった変化が2つあります。ひとつは、ソーシャルメディアが、年齢や職業を問わず、すべての世代において「もうひとつの」メディアから「主たる」メディアへと姿を変えたこと。そしてもうひとつは、生成AIの存在が、我々の日常や仕事の風景を、まるで魔法のように一変させていったことです。どちらの変化も、いまや当たり前なので、あえて言葉にする必要もないほどに社会に深く根を下ろしはじめています。しかし、この「当たり前」という感覚こそが、既存の社会システムを大きく変える契機となっているのかもしれないと感じています。 ソーシャルメディアとトラディショナルメディアを単純に比較することには、もはや意味がないでしょう。ただ、近代社会を形作ってきた情報の流れが、マスメディアという太い一本の川から、ソーシャルメディアという無数の支流へと移り変わっていく様は、見過ごすことのできない歴史的な転換点だったように思います。インターネットが我々の前に姿を現してから30年。多方面でのシステムを変えてしまったこのテクノロジーは、またひとつ社会システムを変化させる大きなうねりをもたらしました。 生成AIもまた、我々の創造性と生産性に、想像をはるかに超える変化をもたらしました。自分自身の仕事を振り返っても、わずか1年前と今日では、まるで別の時代を生きているかのような違いを感じます。朝、パソコンを開き、生成AIとの対話から1日をはじめます。その瞬間から、アイデアが次々と形になり、作業の効率が飛躍的に向上していきます。 そして、我々がこれまで想定していた「人とAIの協業」における境界線は、日々AIの領域へと広がりを見せています。現時点では、その恩恵は主に生産性の向上という形で現れていますが、この1年の劇的な進化を目の当たりにすると、創造性の領域でも、我々の想像をはるかに超えるスピードで発展していくことは間違いないでしょう。 2024年は、メディアの地殻変動とAIの革新という2つの大きな波が、我々の社会システムを根底から変えていった年として、記憶に残ることと思います。