お兄ちゃんみたいになれない…妹を想うネコ駅長達の温かい言葉に涙。「誰にだって、良い所や優れた所は必ずある」【作者に聞く】
「ねこが働く駅」として知られる福島県の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅を舞台に、働くねこたちの様子を紹介する「にゃん旅鉄道」。福島中央テレビの情報番組「ゴジてれ Chu!」内で放送されている約1分間の短いコーナーながら、TVerでは4年間で総再生数170万回を突破し、なんと映画も公開された。 【漫画】本編を読む 「にゃん旅鉄道~さくらの物語~」は、そんな「にゃん旅鉄道」をモチーフにした創作漫画。妹ねこの「さくら」を主人公に、猫たちの日常や実話をもとにしたエピソード、四季折々の美しい風景を、イラストレーターで漫画家のゆきよみさん(@yukiyomi333)が丁寧に描く。 今回は、ある冬の日のエピソード。さくらはストーブの前でうとうと。気付くとそこはあったかい温泉で…。 ■初代ねこ駅長のばす先輩は、「お母さん的な存在」 今回のお話のテーマをゆきよみさんに聞いてみた。 「ぬくもり」がテーマです。冬のストーブのぬくもり、温泉のぬくもり。そして、これまで駅で働いてきたばす先輩とらぶお兄ちゃんのぬくもり。今一人でお仕事を頑張っているさくらは、悩むことも多いけれど、実はたくさんの「ぬくもり」に包まれていると思っています。そんな幸せなさくらを描きたかったんです。 さくらたちが気持ちよさそうに入っている温泉は、芦ノ牧温泉 大川荘の「絶景露天風呂 四季舞台たな田」がモデルとなっています。お風呂はもちろん、その景色の美しさにも魅力を感じたため、大川荘様にお願いして描かせて頂きました。たな田をイメージして造られたお風呂が会津の美味しいお米もイメージされていて、きっと食いしん坊のさくらも大満足では?と思います。 ただ、絶景を漫画でどう表現できるのかについては、試行錯誤しました。雪が降ったときの水墨画をイメージしていますが、読者の方に伝わるとうれしいです。 初代ねこ駅長のばす先輩が初登場するところも、今回の漫画の見どころです。ばす先輩は威厳があってかっこよく、冷静に的確な指示を出す「司令塔」のようなイメージです。一見、近寄りがたい雰囲気もあるけれど、実は優しく温かくみんなを包んでくれる。はまったらその魅力から抜け出せなくなりそうなタイプですね。駅の皆様が「ばすはお母さん的な存在」とおっしゃっていたので、それをもとにキャラクターを作りました。 ■さくらの頑張りは、私たちの心に「あったかい桜」を咲かせてくれている 「ばす先輩やお兄ちゃんみたいにはお仕事ができにゃい…」と悩むさくらに、「私たちと同じじゃなくていい」とほほ笑むばす先輩。そして兄のらぶも、「大丈夫だよさくら」とエールを送る。このエピソードには一人で仕事を頑張るさくらに向けた、メッセージを込めています。 私たちは、自分ができないことばかりに目を向けてしまいがちです。誰にだって、良い所や優れた所は必ずあるのに。私もいつも、「あーあ…」と考えてばかりです。きっと、本能的にできないところに目が向くようになっているんでしょうね。大昔の生存競争していた頃の記憶なのでしょうか。 さくらも気が付いていないだけで、実は沢山のことができていて。漫画だけでなく、実際の芦ノ牧温泉駅のさくらもそうです。お兄ちゃんがいなくなったあともたった一人で頑張って、私たちに沢山の癒やしを与えてくれています。 私たちの心に「あったかい桜」を咲かせてくれる、さくら。いつかそのことに気が付いて、ばす先輩ともらぶお兄ちゃんとも違う「さくら色の桜」を満開に咲かせる日が来てほしいと、心から願っています。 さくらの成長を見守ってきた本連載も、次回でいよいよ最終回。果たして彼女は「さくら色の桜」を咲かすことはできるのだろうか? 取材・文=石川知京