歯科インプラントやっていい人ダメな人(3)天然歯より防御機構が劣る
インプラントは治療後のメンテナンスが非常に重要だ。日本口腔インプラント学会専門医・指導医で、神奈川歯科大学短期大学部の林昌二特任教授が言う。 後悔しない歯科治療(2)安価なインプラント「一式10万円」の落とし穴 「インプラントは天然歯に比べて防御機構が劣っています。また、天然歯は動くのに対しインプラントは動かない。そのため歯周病や咬合で天然歯が動くと噛み合わせが悪くなり、隙間ができ、残存歯に負担がかかります。天然歯よりも、インプラントは日常的な手入れは念入りに、さらには歯科医院での定期的な手入れが不可欠です。それが難しい人はインプラントが適さない人とも言えます」 日常的な手入れとしては、歯ブラシを小刻みに動かし、歯肉との境目に注意して磨く。インプラント周囲の肉は天然歯よりも細菌に対して弱いので、ゴシゴシ磨かない。 歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシも活用し、歯やインプラントの間、根元など細かいところも磨き残しがないようにする。 歯科医院での手入れは3カ月から半年に1度が一般的だ。歯科医と歯科衛生士によるプロフェッショナルケアで、日常の手入れで行き届かない部分のクリーニングや歯石除去をしてもらうことはもちろん、さらに重要なのは、噛み合わせの確認もしてもらえること。 インプラントには上部構造(人工歯の部分)を自分で取り外せる「インプラントオーバーデンチャー」もある。その場合は、上部構造を外してもらい、普段のケアのチェックも受ける。 このインプラントオーバーデンチャーは「取り外せる」という入れ歯の利点と「固定できてしっかり噛める」というインプラントの利点を兼ね備えている。 上部構造を取り外せない従来の固定式では、埋め込んだインプラント1本に人工歯を1本取り付けるが、インプラントオーバーデンチャーは最少1~2本の埋め込んだインプラントで、入れ歯を固定する。「入れ歯に慣れている。ただ入れ歯は安定性が悪いので、インプラントで固定できてしっかり噛めるようになりたい」という人、残っている歯が少ない人、金額を抑えたい人に向いている。 「高齢で今後、介護のことを考慮に入れている人も、インプラントオーバーデンチャーなら取り外せるので手入れしやすい。ただ、インプラントオーバーデンチャーは、入れ歯をインプラントに固定するアタッチメントが消耗品のため、噛む力によっては半年から1年で交換が必要です」 入れ歯の利点とインプラントの利点を兼ね備えたものでは「インプラントテレスコープ義歯」という方法もある。取り外しができる上、耐久性に優れているのもポイントだ。将来のことも踏まえ、どういった歯を求めているか。それらを伝えた際、面倒がらずに複数の引き出しから患者にとって最適なものを取り出して説明できるのが、いい歯科医となる。 =つづく