660ccで77馬力の単気筒!ドゥカティが新開発した公道最強シングルエンジン「スーパークアドロ・モノ」とは?
超ショートストローク型単気筒「スーパークアドロ・モノ」
そして30年後の現在に登場した単気筒エンジンも、ボア×ストローク116×62.4mmという超ビッグボアのショートストローク型だ。ただし、ハイパーモタード698モノに初搭載された「スーパークアドロ・モノ」と称されたそのエンジンは、あくまで公道での走りを重視したものだとアナウンスされている。 2012年登場の1199パニガーレ(実排気量1198cc)で初搭載後、1299パニガーレに受け継がれた1285ccなどの、通称「スーパークアドロ」エンジンの特徴は、ボア・ストローク比を極端にオーバースクエアな設定(=超ショートストローク型)とし、エンジンの高回転化と吸排気効率向上の両立をねらったもの。 そして高回転型で最高出力/最大トルクを発揮するエンジンに冠された名称を継承した「スーパークアドロ・モノ」だが、この単気筒エンジン、一般的に想像しがちな「手強くてパワフルな特性」ではなさそうだ。 それを裏付けるのが「3000rpmから最大トルクの70%を発生し、4500rpmから最大回転数の1万250rpmまでの幅広い回転域で最大トルクの80%を発揮する」というアナウンスで、「スーパークアドロ・モノ」の概要は以下のようになる。 ・1299パニガーレの1285ccスーパークアドロをベースに開発(ビッグボアの超ショートストローク型エンジン) ・デスモドロミックのバルブ機構を採用 ・46.8mmのチタン製インテークバルブ採用 ・アルミ製シリンダーバレル採用 ・2本のバランスカウンターシャフトにより、振動を90度Vツインと同等レベルまで低減 ・直径相当で62mmの楕円スロットルバルブ採用 ・オイル交換サイクルは1万5000km ・バルブクリアランスチェックは3万kmごと そして先に登場し、話題を集めたデスモ450モトクロッサー用単気筒とはまったく別の公道用パワーユニットとして開発。2本のバランサー内蔵で振動を低減してスムーズなパワーデリバリーをねらったほか、長いメンテナンスインターバルを意識した点が、それを表している。 ■名称どおり、1299パニガーレの2気筒スーパークアドロエンジンをベースに派生した単気筒。なおスーパークアドロとは、極端にオーバースクエアなショートストローク型エンジンを意味する。 ■公道走行用に開発されたスーパークアドロ・モノ。エンジンの一次振動を抑制するバランスカウンターシャフトを2本採用し、ドゥカティ伝統のデスモドロミック機構によりチェーン&ギヤでバルブを駆動。クランクシャフトはプレーンメタルベアリング支持。 ■ラージボアでも安定した燃焼を実現する燃焼室形状と、燃焼ガスの乱流を最適化したインテークダクトのデザイン。パニガーレベースながら中速域トルクを太くし、ピークトルクへの立ち上がりを穏やかにした特性をねらうべく、バルブオーバーラップや作用角を減らし、インテークダクト径も適度に絞っている。 ■実排気量659ccながら、車名の数字表記が異なることが近年のモデルでは多々あるが……それはさておき698の単気筒の特徴は現行量産車で最大の116mmボアと、62.4mmの超ショートストローク(ボア・ストローク比0.53)。 ■ビッグボアのピストンは、裏側にダブルリブを設けて強度と剛性を確保し、ピストンスカート部の高さを最小限に抑えた通称「ボックス・イン・ボックス」タイプを採用。これにより摺動抵抗を減らして高回転化が可能に。また高いピストン剛性により、ピストンピン長の短縮化・軽量化も実現。 ■1299パニガーレに準じたバルブは、IN側がチタン製46.8mm径、EX側スチール製38.2mm径の大サイズ。極低回転での燃焼コントロールが難しいとされるビッグボアの燃焼室だが、同エンジンではアイドリング時や低回転域での安定した燃焼効率も加味し、1299パニガーレ用に対してバルブオーバーラップを45度から20度へ狭め、作用角とバルブリフト量も減らしている。なお、デスモドロミック機構はチェーン+ギヤの組み合わせで作動し、ロッカーアームはDLC(ダイヤモンドライク・カーボン)コーティングで、低摩耗かつ滑らかな作動性を実現。 ■直径62mm相当の楕円形状スロットルボディはミクニ製。1299パニガーレの67.5mm相当サイズに対して小径化し、吸気流速を適正化。フル・ライド・バイ・ワイヤによって制御されるスロットルバルブの下部に1インジェクターを配置。またハイ・ミディアム・ローの3パワーモードのマッピングも制御。 ■ゴールド基調のシリンダーヘッド、クラッチ、ジェネレーターカバー類は、マグネシウム製。軽量でありながら、表裏に細かなリブを設けることで、剛性確保のほか、振動騒音の低減もねらった。 ■単気筒ながら1万250rpmがレブリミットの高回転エンジンは、3000rpmから最大トルクの70%を発生。また4500rpmからレブリミットまでの幅広い回転域で最大トルクの80%を発生するなど、全域でフラットなトルクを発生しつつ、素早いスロットルレスポンスも両立。ワイドレンジに力強いパワーデリバリーをねらっているようだ。