「夏こそ160キロを出したい」投手歴わずか2年…プロ注右腕の“放言”に監督激怒のワケは? ソフトバンクからドラフト1位指名・村上泰斗に訪れた転機
ドラフト前…懸念だった「公式戦の少なさ」
そんな中、岡本監督はある懸念を抱いていた。 「あの頃から(ドラフトで)上位はある、という声もいただいていましたが、村上に足りないものを挙げるとしたら経験。公式戦の経験が少ないので、その辺りがどう評価されるのかなとずっと思っていて。春の県大会後に、履正社さんや(最速153キロ右腕の川勝空人がいる)生光学園さんなど、力のある学校と練習試合を組ませてもらって多くのスカウトの方に見に来ていただきましたが、そこでの内容をどう見ていただいているのかは気になりました」 ストレートの最速だけを見れば村上は153キロ、今朝丸は151キロ。村上は投手を始めてわずか2年ほどで、のびしろだけを見ても楽しみな部分はあるが、村上の経験値をどう判断材料に生かしていけるのかを口にするスカウトはいた。中には「公式戦で力のある相手にどれだけ投げられるかを見ていないので、測れない部分もある」という声も。 それでも9月に入ると村上の上位指名の可能性の大きさがまことしやかにささやかれるようになったのは、投手としての能力に加え、岡本監督が言う村上の良さである「身体の強さと器用さ」も、大きなポイントとなったのかもしれない。 ドラフト会議で指名された順位は村上がソフトバンク1位、今朝丸は阪神2位だった。 岡本監督は「村上の方が上だった、と私は大喜びしてしまいました」と嬉しさをにじませたが、村上は冷静な表情でこう口にする。 「順位が上だったから自分が勝った、とは思わないです。プロの方からすると評価するポイントや方針がチームによって違うと思いますので。あくまで順位の問題であって、本当の勝負はここからだと思います。勝ったと思えるのは今朝丸君と投げ合って勝ってから。今朝丸君とはこれからも切磋琢磨できる関係でいられたらと思います」
「人間性もしっかり持って謙虚な気持ちを」
プロに入れば早ければウエスタンリーグで投げ合う可能性もある。再び対戦することを心待ちにしつつ、ドラフトが終わってもさらに練習には熱が入っている。 「これまではプロに入るための練習をやってきましたけれど、これからはプロで活躍するための練習をしないといけないと思っています。今は身体を強く、大きくするためのトレーニングも多いですね。プロの世界では、人間性もしっかり持って謙虚な気持ちを大切にしていきたいと思います」 村上にプロに向けた意気込みを問うと、何度も「人間性」というフレーズが出てくる。どんな状況にも冷静に控えめに。もちろん野球で遠慮は必要ないが、相手あっての試合、そしてファンあってのプロ野球選手。野球と人間性を極めた一流選手を目指したいという。 「(同じく高卒投手で日ハムから1位指名された)柴田(獅子)投手もそうですが、自分は劣っている部分は多いです。でも、今朝丸君も含めて同世代の投手は勝っていかないといけない存在です。自分はメジャーリーガーになることが大きな目標です。 1年目はプロの雰囲気に慣れながら身体作りをしていくと思いますが、(日本のプロ野球界で)圧倒的な成績を残したいです。将来は誰からも応援される選手になりたいです。目標は同じソフトバンクだと和田毅さんです。あれだけ息長く投げられているのは人間性も関係していると思うので……。普段の生活から意識していることを、いつか聞いてみたいです」 ライバルとの戦いはむしろこれから本格化する。村上泰斗。ソフトバンクの次世代を担う大きな星となり、マウンドで輝く時を楽しみに待ちたい。
(「甲子園の風」沢井史 = 文)
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