「夏こそ160キロを出したい」投手歴わずか2年…プロ注右腕の“放言”に監督激怒のワケは? ソフトバンクからドラフト1位指名・村上泰斗に訪れた転機
強豪との練習試合も成長の転機に
村上の成長の大きなきっかけとなったのが今春3月2日に行われた練習試合だ。 報徳学園との試合で、センバツを控えた今朝丸裕喜投手との投げ合いに多くのスカウトがスタンドを陣取った。両投手が先発し共に3回を投げ、今朝丸は2安打無失点、村上は3安打4失点。完ぺきに封じ込んだ今朝丸に対し、村上は彩星工科戦のような、走者を背負ってからの力みが解消されていない印象も受けた。 試合後、岡本監督は村上にこう語りかけたという。 「(今朝丸と)差がついたな。このままだったらもっと差が開くぞ」 村上に、この言葉が重くのしかかった。 「県内では今朝丸君が一番注目されていた投手。でも、自分は本当にヤバイな。ドラフトにかからないかもしれないって思いました。個人として実力で負けているとは思っていなかったですけれど、あの高さからあのスピードのボールを投げられたら、初見だったら難しいですよね。ただ、あの試合で危機感はかなり持ちました」 春の県大会では今朝丸はベンチを外れていたが、村上はエースとしてマウンドに立ち続けた。 初戦の八鹿戦では14個の三振を奪い公式戦初完封勝利を挙げると、次戦の神戸国際大付戦では6回の二死満塁のピンチからマウンドに上がり、ストレートで空振り三振を奪ってピンチを脱すると、2回1/3を投げ2安打無失点。試合は1-3で敗れたが、4個の三振を奪い「7~8割の力で投げられた」と納得の表情を見せた。 この頃からかつてのような力任せ感は消え、制球のばらつきも減り、八鹿戦は四球がわずか3個。さらに今夏の県大会初戦の飾磨工戦では9回一死まで無安打投球を披露。その後、二塁打と内野安打で1点を失ったが、9回以外に背負った走者は2回に出した2四球のみで、大崩れすることなく完投勝ちし成長ぶりはしっかり見せつけた。3回戦で西宮今津に2-3で敗れ早めの夏の終わりを迎えたが、村上は地元・兵庫県猪名川町に戻っても変わらず練習を続けていた。 そんな中、ライバル関係にあった今朝丸のいる報徳学園は夏の甲子園出場を決めた。 「自分たちは(夏の県大会で)早く負けてしまいましたけれど、報徳はチーム力も高かったですし、全体として見れば経験や力の差はあったと思います。でもそこで悔しいで終わるのではなく、今朝丸君が表舞台に立っている夏休みの間、自分はずっと練習してきました」 今朝丸の県大会決勝での快投(5安打完封)も、夏の甲子園初戦の大社戦も、リアルタイムには見ていない。負けて高校野球が終わったとしても、野球が終わった訳じゃない。次の世界に向けての準備は夏休みにいくらでもできる。地元では兄の通った高校の施設を借りて、現役選手に混じって練習を続けていた。
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