性被害や命の危険も…トイレ問題解決のため日本企業がビル・ゲイツと“タッグ”
「リインベンテッド(=発明しなおされた)トイレ」。日本の住宅設備メーカー「LIXIL」が、水道も下水道も必要ない家庭用水洗トイレの製品化に取り組んでいる。 トイレ自体はごく普通の洋式便器だが、背中側に洋服簞笥(だんす)ほどの大きさの箱形の機械が付いている。中には何本ものチューブ、脱水タンク、ベルトコンベヤー…。この機械で、排泄(せつ)物を“飲めるレベル”の「水」と、堆肥にも利用可能な乾燥した「固形物」に浄化できるという。 必要なのは最初に投入するコップ1杯の水と、機械を動かすための電源のみ。水道や下水道につなげる必要はなく、発展途上国などインフラが脆弱(ぜいじゃく)な環境でも自立して設置が可能だ。
■命の危険や男女格差拡大も
世界には、安全に管理されたトイレを使えない人が34億人いるという。このうち4億1900万人は家や近所にトイレがなく、道端や草むらなど、屋外で用を足している。(2022年、ユニセフ調べ) 屋外での排泄などで排泄物が適切に処理されない地域では、排泄物が生活用水に混じり、下痢などで命を落とす子供が後を絶たない。また、ユニセフなどの現地調査によると、女性にとってはさらに苛酷で、人目を避けるため、暗くなるまで排泄を我慢し、かつ、日中に尿意や便意を催さないよう、水分や食事を控えるという。 ようやく夜になって人気のない草むらへ向かうと、性暴力に遭ったり、野生動物に襲われたりすることも。思春期の女子は、学校に安全なトイレがないことなどで通学できず、教育機会を奪われてしまう。結果として、男女格差は広がったままだ。 国連はSDGsの目標6に「2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う」と掲げている。しかし、上下水道の整備には膨大な費用と時間がかかるため、発展途上国に先進国と同様のトイレを短期間に普及させることは現実的ではない。 「リインベンテッドトイレ」は、こうした発展途上国のトイレ問題の解決が期待されている。