2025年から固定電話が変わる! NTT法に基づく全国一律の「電話」はどうなる?
NTTの固定電話網(PSTN)は、施設維持の限界などを理由に、2025年1月までに従来のアナログ回線からIP網へと転換する予定です。これにより、通話料金の全国一律化などが実現される見込みです。しかし、固定電話網(PSTN)のIP網への移行において、現実的にはすぐに移行が完了できない地域もあるでしょう。過疎地や不採算地域が該当します。 【画像でわかる】過去に購入したNTTの「電話加入権」はいまどれくらいの価値があるのか? さらに、NTTはNTT法に基づき「ユニバーサルサービス」として固定電話の安定提供が義務付けられているため、施設維持の限界を迎えた後も一部地域では「アナログの固定電話」が残る可能性があります。 本記事では、2025年以降の固定電話の変化、そして「固定電話がユニバーサルサービスであり続ける意味」「携帯電話を中心としたユニバーサルサービスに刷新すべきか」という点について解説します。
固定電話のIP網への移行について
2025年1月、NTT東西が提供する固定電話サービスは、従来のアナログ回線からIP網へと完全移行する予定です。背景には電話の契約数の減少や電話の購入設備が限界を迎えることが挙げられます。 なお、IP電話とは、インターネット回線を利用して音声通話を行う電話サービスのこと。従来の固定電話は専用の電話回線を通じて音声を伝達し、その距離によって料金が変動します。一方で、IP電話の場合はネット回線のみを利用するので距離に関係なく一定の料金で利用可能です。 ■NTT法に基づく「ユニバーサルサービス」としての固定電話はどうなる? IP網への移行に基づいて、再度注目されているのが「ユニバーサルサービス」としての固定電話についてです。NTT法に基づいて、NTTには固定電話の提供義務があります。この義務は、1984年に日本電信電話公社が民営化される際に設けられたもので、NTTは「ユニバーサルサービス」として全国一律に固定電話を提供する責任を負っています。 この規制は、国民生活に不可欠な通信手段として固定電話の提供を義務付けるものであり、特に過疎地域や離島など、商業的に利益が見込めない地域でもサービスを提供することが求められています。一方でこの「ユニバーサルサービス」の負担は大きく、固定電話の赤字はNTT東西で550億円という額です。 そのため、「固定電話がIP網に移行した後も、固定電話がユニバーサルサービスであり続ける意味はあるのか」といった疑問の声が出ています。「携帯電話中心のユニバーサルサービスに再設計しないと、ガラパゴスなユニバーサルサービスが生まれるだけではないか」という指摘もあります。 2024年9月現在、固定電話がIP網に移行してもNTT法が改正されない限り、固定電話はユニバーサルサービスの対象であり続けます。そのため、IP網への移行が遅れた過疎地域や不採算地域では、「アナログの固定電話」が引き続き提供される可能性があります。 ■NTT法廃止の議論と「ユニバーサルサービス」の関連性 余談ですが2024年現在、自民党内でのNTT法の改正論やNTT法の廃止議論も活発化しています。2025年には議論がさらに進展するでしょう。 その大きな理由には ・NTT法を時代に合った形へと見直すべきではないか ・そもそもNTT法を廃止し、政府が保有するNTT株を売却することで防衛予算を確保できないか といった思惑があります。ちなみにNTT法が廃止された場合、NTTはユニバーサルサービスとしての固定電話の提供義務から解放されます。 NTT法廃止に反対を表明しているのは、KDDIやソフトバンクです。そもそもNTTが持つ通信インフラは、NTTが電話加入権などを通じて集めた25兆円(当時)で整備されたものであり、KDDIの岸田隆司執行役員渉外・広報本部長は「国民の負託を受けている以上、安定的に提供する責務がある」とはっきり反対の意思を示しています。