生成AIはコンテンツビジネスを「殺す」のか? 「職能価値低下」の末路
生成AIが創作の場に広く進出している。ただ、『東京トイボックス』『南緯六〇度線の約束』などで知られる漫画家ユニット・うめの企画・シナリオ・演出担当である小沢高広氏と、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』ほかアニメ・特撮分野の脚本を多く手掛ける脚本家の小林雄次氏によれば、生成AIの用途はまだまだ限定的。仕事が「奪われる」ほどのものではないという(前回、前々回記事参照)。今回は、生成AIが比較的早期に進出し、かつビジネス面でも直接な影響を及ぼしたライティング(文章作成)領域での話を入口に、生成AIが創作領域にもたらす──ビジネス的な見地からみた──パラダイムシフトについて、小沢氏と小林氏の見解も一部交えつつ考察する。 【詳細な図や写真】ユーザーローカルではプレスリリースの文章を元に記事を自動執筆するツール「プレスリリース記事変換AI」を無償で提供している(出典:ユーザーローカル)
匠の100点か、無料の75点か
専業ライターとしての筆者の私見だが、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルを元にした生成AIは、「まとめ力」にすぐれている。平たく言えば、説明文だ。「何々についての説明を△△文字程度で書け」の類いが最も得意である。 そして世の中の、特にインターネットに落ちているテキストの相当量は「説明文」だ。 ある事件や事象について報じたテキストニュース。新製品のスペックや新サービスの概要を記したプレスリリース。あるトレンドについての直近の状況や具体的事例。映画やドラマ作品のあらすじ。誰それという著名人の最近の活動や発言。そういった、一次情報や商品や作品が先行して存在する状況下で求められる、かつ記名性や属人性が低い(作家性が必要とされない)説明文は、生成AIと非常に相性がいい。 つまり、今までそのようなライティングを生業としていたライターは、今後、仕事の多くを生成AIに取って代わられる可能性が高い。 ここで「生身のライターの原稿のほうが的確だ」とか「文章がうまい」という反論は意味をなさない。単純化かつ極論するなら、1本3万円の原稿料で1週間かけて100点の原稿を出してくるライターと、無料かつ数秒で75点の原稿を出してくる生成AI、どちらの「費用対効果が高い」かを発注者が判断するだけの話だ。 すでにプレスリリースや定型の商品説明文などは生成AIによる作成が実現している。また、「議事録の音源を文字起こしして整え、規定文字数に要約する」ことが当たり前にできている現状下、放送されているニュース番組からWeb記事を量産することもたやすい。「著名人がTV番組で物議を醸す発言をして炎上」のようなコタツ記事など、早晩すべてAIが作成することになっても、なんの不思議もない。 当然ながら、コタツ記事ライターは廃業である。