2025年を自ら考えて動く!年始に読みたい3冊
ごみから社会のありようを見る
年末年始は通常ごみの収集が休みになるため、正月明けに、集積所で大量のごみ袋が積みあがっているのを見たことがある人も多いだろう。2025年の新春も各地でそんな光景が見られそうだが、ごみが回収された後、どう処理されているのか知っている人は多くない。 『ごみ収集の知られざる世界』(藤井誠一郎著、筑摩書房)はそんなごみ出し後の世界を徹底したリサーチで教えてくれる。著者は大学に所属する研究者だが、実際にゴミ収集車に乗務して作業体験を重ねるなど各地の現場を回り、ごみ収集の実態をつぶさに目にしてきた。本書は家庭ごみと事業系ごみとの違いなど基本的な点からわかりやすく解説しており、それらからごみと社会の関係性が見えてくる。 雪の中の作業は、過酷そのものであった。雪に不慣れな者は全くといっていいほど使い物にならない。(中略)雪靴で動きにくく、足が雪の中に吸い込まれていくようで思うように動けず、何回かこけてしまった 著者の訪れた先の描写からは、こうした厳しい現場のほか、各地で地域特性に応じた収集方法が工夫されている様子がわかる。女性だけの収集チームもあり、ソフトなイメージで近隣住民にも好意的に受け止められている様子などが紹介される。 著者の解説で気づかされるのは、ごみ減量やリサイクルなどは最終処分場を意識して考えるべきという基本的な部分である。清掃事業は(1)収集・運搬、(2)清掃工場での中間処理、埋め立て等による最終処分という体系でできており、これらを一気通貫して考えることが重要だと説く。 統一的かつ一体的に機能するがゆえ、清掃事業が成立し、ごみ収集サービスが提供される。よってごみ収集は、清掃工場と最終処分場といったインフラ施設と密接に関係しており、一体性が維持できなくなれば、収集サービスをしたいと思っても、そうはできなくなる。 最終処分場は山の中や海上など人目につきにくい場所にあるため、ごみを出す側も意識しづらい面がある。しかしごみが最後に行きつく先はそこであり、その容量は無限ではない。回収にあたる人の苦労や限界ある最終処分場のことに思いをはせれば、一人ひとりが出すごみの量を極力減らすなど向き合う姿勢もおのずと変わってくるはずだ。 これら3冊に共通項を見出すとすれば、自分で考えて行動するということだろう。政治や経済の行方を正しい情報に基づいて判断することや、いい仕事をするための戦略的な休み方、そしてごみ減量や循環型社会への参画の仕方などである。 いずれも自分なりに考えを巡らして、新しい年に実践してみてはいかがだろうか。
池田 瞬