草笛光子×内野聖陽 年齢差35歳、2人を結ぶ絆とは「あなたとは昔からの知り合いみたいな気がするわ」「舞台終演後の焼き肉屋さんで倒れ、草笛さんに病院まで運んでもらった」
25年前、初対面ながら「昔からの知り合いみたいな気がする」と草笛光子さんが感じたという俳優の内野聖陽さんが、今回のゲスト。年齢差を忘れるほど打ち解けた関係性は微笑ましくも、「俳優」としての経緯が互いの絆を深めてきたことが伝わってきます(構成:篠藤ゆり 撮影:天日恵美子) 【写真】お互いに笑い合う草笛さんと内野さん * * * * * * * ◆はじめてのミュージカル出演の前に 草笛 お久しぶりね。あなたと会うの、どれくらいぶりかしら。 内野 やだなあ(笑)、去年、草笛さんのおうちに行って飯食ったじゃないですか。草笛さんの撮影中、楽屋にも少しだけ伺いましたし。 草笛 そうだった? 私たちってなんていうのかしら、朋友でもない、幼馴染でもない……、 内野 幼馴染ということはないですけど(笑)、はじめてお会いしたとき、草笛さんは「あなたとは昔からの知り合いみたいな気がするわ」とおっしゃったんです。印象的な言葉でしたね。 草笛 ニール・サイモンの『裸足で散歩』で共演したのよね。もうずいぶん前のことだけど。 内野 25年前です。 草笛 はじめて会うような気がしなかったのは、仕事への向き合い方が似てると思ったからかな。あと、舞台で歩んできた人の匂いがしたんじゃないかしら。
内野 以来、フランクにおつき合いさせていただいているので、年齢差を意識することがなかった。それで改めて、草笛さんと僕はどのくらい違うんだろうかと調べてみたんです。そしたら、親と子くらい違いましたよ。35歳ですって。 草笛 へー。私、そんなに上? 内野 いや、僕も「そんなに下?」と思いましたけどね(笑)。いつも草笛さんがフレンドリーな雰囲気で接してくださるからでしょう。 草笛 「くださる」なんて、いい言い方しちゃって。(笑) 内野 ミュージカル、舞台、ドラマ、映画……芸能史の中心を歩いてこられたような大先輩なのに、まったく垣根をつくらない。そう、草笛さんは先輩というオーラを共演者に出さないんですよね。 草笛 『裸足で散歩』では宝田明さんも一緒だったじゃない。楽屋にピアノがあって、一緒に発声練習したの覚えてる? ♪ハ、ハ、ハ、ハ~って。 内野 そのときの僕はF(高音のファ)までしか出なかった。「もう、これ以上は出ませーん!」となって、宝田さんから「君はFまでだね」と言われたのを覚えています。 草笛 でも、よく声が出ていたわよ。宝田さんも「ミュージカルに出たほうがいいよ」と勧めてたもの。 内野 ちょうどその舞台を、ミュージカル『エリザベート』のトート役を探していた演出家の小池修一郎さんが観にいらしていて、声をかけていただいたんです。それでおふたりと発声練習をすることになったのか、前後関係は忘れてしまいましたけど、僕にとっては初のミュージカルへの挑戦で。 草笛 私、観に行ったわよね。 内野 終演後、「もっと自分自身が作品に酔わなければダメよ。自分が酔わないと、人を酔わせられない」とアドバイスされました。 草笛 ずいぶん偉そうなこと言ってるわね、私。 内野 2000~05年の間にトート役を何回か務めたんですが、05年くらいのトートは、やっと自分らしさを出せるようになって。エロくてカッコよかったんじゃないでしょうか(笑)。でも00年のときはだいぶ堅かった。草笛さんのアドバイスは、そのとおりだと思いました。
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