中国誕生から75年…国歌から見える「日本は絶えず意識し続ける存在」
建国から10月1日で75年=四分の三世紀。建国から1世紀、つまり建国100年は25年後、2049年だ。習近平指導部は、建国100年の2049年までに経済や科学技術などの総合的な国の力で、アメリカを超え、「世界をリードする国になる」と目標を掲げている。そこで「中華民族の偉大な復興」を成し遂げようとしているわけだ。 その習近平主席は現在、71歳。25年後は96歳になる。権力に固執する人ほど長生きだとも言われている。2049年10月1日、天安門広場で開く建国100周年式典に、出席したいのだろう。 建国100周年を迎えるまでに、アメリカとの競争に決着を付ける――。やはり視野にあるのはアメリカだ。しかし、アメリカという大きな壁の前に、日本の存在がある。地理学的にも太平洋の反対側のアメリカの前に、日本がある。 たとえば、習近平指導部の悲願の一つが台湾統一。しかし、それを阻んでいるのが、台湾有事に備える日米安保であり、さらに遡れば、かつての日本の台湾統治。その歴史の中で、台湾住民の間に染みついた日本という存在という認識だ。中国にとって、自分たちの進路を塞ぐ存在こそ、日本なのだろう。 3年前の2021年7月のこと。習近平主席は中国共産党の結党100周年式典で、こう演説した。 『中華民族は強烈な民族の誇りと自信を持っている。我々をいじめ、服従させ、奴隷にしようとする外国勢力を、中国人民は決して許さない』 『妄想した者は14億の中国人民が、血と肉で築いた鋼の長城にぶつかり、血を流すことになる』 かなり強い表現で、外からの圧力に立ち向かうと宣言した。習近平氏が使った言葉に気付くだろう。「中華民族」「奴隷」「血と肉で築いた長城」…。中国国歌の歌詞そのものだ。 建国100周年までに、「世界をリードする国になる」という目標を掲げる中国。習近平氏の決意が凝縮するのは、あの中国国歌の歌詞そのものなのだ。そして紹介したように、この国歌のルーツ、中華人民共和国という国家を支えるのは、「日本とどう向き合うか」という意識。彼らにとって、日本は絶対に「警戒感を持って意識する存在」であり続けると思う。
■◎飯田和郎(いいだ・かずお) 1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。
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