CM投下直後のコロナ禍で、求人と売上が激減。存続の危機を回避した「偏りの分散」とブランドの一貫性|株式会社タイミー
ミッションというブレない軸で統一する役割が必要。ブランドを司る部署を立ち上げた狙い
ここまで紹介したように機能開発に携わったり、飲食店を立ち上げるプロジェクトを実施したりなど、一般的なブランディングの枠を飛び越えてさまざまな挑戦を行う、タイミーのBX部。木村氏が入社した当初、社内の状況をキャッチアップしていくなかで感じた課題感をもとに、立ち上げた部署だ。 「皆さん会社のことを当然思い、最善策を実行しています。ただ、サービスをどういうイメージで訴求したいのか、部署によって異なることに気づきました。例えば学生向けバイトやセーフティーネットというイメージを重視する部署もあれば、副業解禁や働き方改革など社会課題に合わせた訴求を行いたいという部署もあり、外部に向けたコミュニケーションは異なり一貫性があまりありませんでした。どういう『ブランド』であるべきか、1つの切り口でみんなのやっている活動を横串にし、少ないリソースで最大限タイミーのやっていることを伝える部署が必要だと感じました。そこで、代表に提案してつくったのがBX部です。組織は徐々に大きくなってくると分散化し、各部署で伝えたメッセージがバラバラになります。ステークホルダーに合わせてメッセージを変えていくことは良いのですが、それをブランドの意味=ミッションというブレない軸で統一する役割が必要だと感じたのです」 木村氏の提案で、新しく立ち上がったBX部。一つひとつ実績を積み重ねていくことで、周囲からもその存在を認められていった。 「私たちの部署が担う『ブランド』は、そもそも目に見えず、抽象度が高いもので、わかりにくい。でも、ブランドとは簡単に言うと、自分がタイミーに対してどういう印象を持っているのかなんです。うちで言うと社員には、ミッションで語っているイメージを持ってもらいたい。それを社員全員が共通認識として持つことで、日々の活動に反映され、結果的にユーザーから見たときのタイミーの印象につながります。このように、社内でミッションに対する解像度を上げることも大事です。そのため、社内イベントで、ミッションを体現するワーカーさんの話を聞く場を設けることもあります。また、社内外問わず『タイミーラボ』というオウンドメディアなどで、ミッションを体現するワーカーさんや事業者様のストーリーを可視化しています。これまでの取り組みにより社内の認識は少しずつ揃ってきたところがありますが、社外に目を向けると、まだまだ『ただのスキマバイトでしょ』という反応もあります。でも、私が入社した2021年頃と比べると、世の中からの反応も少しずつ変わってきており、当初はバイトアプリのイメージしかなかったものの『タイミーを使ってこんな体験ができました』と、体験価値に目を向けるSNS投稿などもたくさん出てきており、ミッションを体現してくださっているワーカーさんや事業者様も増えてきました。これからも、ブランド体験の向上に向け、1つずつファクトを積み重ねていきます」 ブランディングの軸を、ミッションに置くタイミー。一貫したブランドをつくるために、BX部が機能開発に関わるのはもちろん、自分たちでTHE 赤提灯プロジェクトなどミッションを体現するファクトを生み出すのが印象的だ。スタートアップが急拡大し、従業員数も増えるなかで皆が向く方向を統一するのは、一つの大きな壁として立ちはだかる。そんなとき、タイミーのようにブランディング×ミッションの視点を持つと解決できるのかもしれない。
【プロフィール】 木村真依 BX部 部長 新卒でマクロミルへ入社後、当時30名のクックパッドに事業立ち上げメンバーとして入社。マーケティング支援事業やセールスに従事し、セールスMVP・全社MVPに。その後PR専任となり、クックパッドのビッグデータ等を活用したブランディング、PRで月間約6300万人が利用するサービスへと事業成長に寄与。約10年間勤めたのち、GU/ファーストリテイリング(兼務)でマーケティング、PRとして従事。その後PRのSaaSアプリ事業の責任者、フリーランスで企業のPR、ブランディングのコンサルティングを行い、2021年2月にタイミーにジョイン、現在に至る。
文:吉田 祐基/ 写真:Mai Sato