久留里線の利用者が激減した3つの理由! 輸送密度“9割減”も、地元からは「廃止阻止」の声 廃止問題に対する議論は十分だったのか
廃線を観光資源に変える挑戦
利用者が少なく採算が取れない鉄道路線を維持するためには、行政をはじめとする関係者が費用を分担することが避けられない。しかし、財政的に厳しい自治体にとって、人口減少にともない税収が減少するなかで、社会インフラの維持に必要な予算を確保するのはますます困難になっている。 例えば、水道管の老朽化が進み、水漏れ事故が頻発しているが、水道管の交換ができない自治体も増えている。水道は命に直結する重要なインフラであり、代替手段がほとんどないため、最優先で守らなければならないが、それでも予算が足りない。一方、鉄道には自動車という強力な競合が存在する。そのため、自治体としては、鉄道への支援よりも、水道維持を優先せざるを得ないのは自然な流れだろう。 亀山温泉ホテルの鴇田社長がいうように、上総亀山駅周辺の観光施設を訪れる観光客の大半が自動車で来ている現実が久留里線の経営を圧迫した。久留里~上総亀山間の廃線は避けられない可能性が高い。それならば、せめてその鉄道施設を観光に活用する方法を考えたい。鴇田社長は 「久留里~上総亀山間の約10kmには景色の彩りや、山間の渓谷を抜けて終点に辿り着くという点で非常に見ごたえがあり、価値がある。終点の上総亀山駅周辺の活用、また仕掛けをしていくべきであると思っている。線路の上で寝そべるスタンドバイミー体験や、久留里線のキハシリーズ1両を久留里~上総亀山間でゆっくり走らせて、お座敷列車として食事ができる体験など、活用方法はある」 と提案している。このアイデアに対して、君津市企画調整課は 「廃線施設をJRから譲り受ける場合、維持費用が発生する問題がある。(鉄道施設の譲受は)地域のありかたの中で考えていくことになる」 との立場を示している。 廃止された鉄道を観光に活用する事例はいくつかあるが、ここでは福岡県北九州市の平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線を紹介する。JR貨物が持っていた貨物線を北九州市が買い取り、自身が保有していた貨物線と合わせて観光目的で活用するために、常設鉄道として初めて特定目的鉄道の事業許可を得た路線だ。この路線では列車が主に土日や祝日に運行されている。廃線施設を地域の観光資源として再生させた象徴的な例といえるだろう。 先人たちが築いた鉄道遺産は貴重な文化財でもある。これを有効に活用する方法をしっかり考えたい。鉄道を維持できなかった地域であるという事実は消せないが、廃線となった施設を観光施設として再生させることで、新たな可能性を切り拓けるはずだ。