有名人の訃報に接したオバ記者が思うこと 80代で亡くなると「年に不足はない」というが“持って生まれた寿命”は皆違う、「私もいつまでも見送る側じゃいられない」
さまざまな分野で活躍した有名人たちが亡くなった2024年。人生について考える機会も多かったのではないか。『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんが、2024年の有名人たちの訃報に接して思うことを綴る。
* * * ここ何年もテレビから離れた暮らしをしている。特に午後のワイドショーを最後に見たのはコロナが始まった頃だから4~5年経つのよね。理由は有名人の訃報の後のセレモニーと局アナの沈痛な声を聞くに堪えなくなったからだ。 年子の弟、義父、母と家族3人が立て続けに亡くなり、さらに19年同居した飼い猫と、苦楽を共にした親友まで見送った私は、局アナの口ぶりに違和感を感じたのよ。いや、そうではなくて、見ず知らずの有名人を見送る心の余裕が私自身になかったのかもしれない。 そんな私の目を覚ましたのが、中山美穂さん(享年54)の死よ。ネットニュースをハシゴして、「そんなバカな」と繰り返したもの。そして思い出したのが1年前の2023年12月30日の八代亜紀さんの訃報なの。73才という享年が早すぎるというだけじゃない。闘病話も聞いてなかったし、いつも歌番組に出ている人と思っていたからよ。そして、年が明けて冠二郎さん(享年79)と小金沢昇司さん(享年65)が相次いでこの世を去っている。 数年前に83才で亡くなった、歌のうまかった義父は、実家に帰るとテレビに顔をくっつけるようにして歌番組を見ていたんだよね。その光景が急に浮かんできて堪らなくなった。昔から歌のうまい女性の定番ソング『ノラ』をヒットさせた門倉有希さんが6月に50才で亡くなったときも、義父とその歌仲間の顔が浮かんだっけ。 私の田舎には「年に不足はねぇべ」という慰めの言葉があって、80代の人の死は、その言葉を聞くとストンと落ち着くんだわ。70代だと「もう少し生かしてやりたかったな」と言う。その代表が11月に訃報を聞いた火野正平さん(享年75)だ。東日本大震災直後の2011年4月から始まった『にっぽん縦断 こころ旅』(NHK BS)で、どれだけの人の気持ちが救われたか。いくつになっても軽やかにタップを踏んでいそうなイメージだった西田敏行さんも10月に76才でこの世を去った。12月に入って一時期、ワイドショーの顔だった小倉智昭さんも他界した。77才だったのね。 誰でもそうかしら。亡くなったと聞いてひりつくような気持ちになるのは同世代の死だ。漫画家の鳥山明さんは3月に68才で他界。『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)のまる子の声優・TARAKOさんも3月に63才で他界。私に将棋の面白さを教えてくれた『将棋の子』の作家・大崎善生さんは8月に66才で他界している。67才の私は彼らの死に納得いかなくて「仕事しすぎたんじゃないの?」とか「ちゃんと健康診断を受けていたのかしら?」とか、声にこそ出さないけれどイチャモンのようなことを言いたくなるんだわ。