中学受験後に不登校になる子が増加中!精神科医に聞く、12歳のチャレンジ後のメンタルケアとは|STORY
STORY6月号「中受のその後の家族STORY」で取材をした精神科医の尾林誉史さんに、本誌のなかでは書ききれなかった内容を紹介します。 精神科医・尾林誉史さんprofile 東京大学理学部化学科卒業後、(株)リクルートに入社。退職後、弘前大学医学部医学科に学士編入し、東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。現在、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の院長を務めつつ、23社の企業にて産業医を務める。
今、 中学受験その後に不登校になる子が増加中!
思春期は身体も心も変化が起こる大変な時期。子どもだけでなく、親も40代となると人生のステージが変わる頃で、さらにホルモンバランスも変化して、第二の思春期と言えるくらい揺れる時期なんです。そのタイミングでさらに家族での中学受験チャレンジも加わってくると、ますます親子関係が難しくなるのも仕方がありません。 そんな受験や思春期のモヤモヤの吐き出し口として家で暴れたり、親へ反抗的な発言をするのは、子どもにとってガス抜きの一種といえます。受験のために頑張っているわが子が、うまく吐け口をつくれているかどうかを、親が気づいてあげることも大切です。一方で、それが表面に現れず「いい子」といわれる子は、内に溜め込んでいる可能性があるため、要注意です。中学受験後に不登校になるケースが増加しているのは、親や周囲の大人たちが、そこに気づけずにいることが原因の一つです。
イイ子ほど、「中学受験」も親のために頑張ってしまう
私が医療監修をした漫画、「群青のカルテ」の登場人物、悠里も実はその「いい子」の1人。高校1年生の悠里は、空気も読めて、真面目で、人付き合いを大切にする子。専門的な言い方をすると、「親和型」と言われるタイプです。表面的には親子関係もうまく成り立っているように見えるのですが、その一方で責任感が強く人に甘えられなかったり、自分でどこかおかしいと思いながら抱え込んでいるのが特徴的。そのため、うまく相談できずいっぱいいっぱいになりやすいんです。一見、親子関係も良好に見えますが、何でも話しているわけではなく、むしろ親が思っていることを叶えてあげたいと思い行動する傾向にあります。そんな子は、中学受験でも親のために一所懸命頑張ろうとする子が多いんです。 親の立場からすると、「はっきり何に悩んでいるのかを知りたい」「困っていることがあったら、すぐに解決してあげたい」と思いますよね。でも、思春期の子って悩みをいうことをカッコ悪いという感情もあって、大人ぶりたいんですね。そんな子に唯一親としてできることは、寄り添う空気感や安心感を伝えること。「あなたは優秀よね」「いつもいい子だね」と親が思い声かけをするより、「あなたも頑張っているのよね」「悩みと戦ってるんだもんね」と共感し、その思いを子どもに伝えることがことが何よりも救いになります。そして、抱きしめてあげることでより深い部分まで助けてあげることにも繋がっていくんです。