二宮和也が“続編”で与えた衝撃 『【推しの子】』『インフォーマ』で披露したダークな二面性
演技の場における俳優・二宮和也のキャッチボールの巧さ
いっぽう後者で二宮が演じているカミキヒカルは、映画の公式サイトでは“「劇団ララライ」OB。謎の男。”とだけ記されている。あまりこのキャラクターについて深く言及するとこれから鑑賞しようという方にとっての楽しみが減少してしまうため避けておくが、物語の本筋のひとつが主人公・星野アクア(櫻井海音)が実父を探すものであることは述べておこう(ここまで記せば二宮の役どころも自ずと予測できてしまうと思うが……)。このカミキヒカルもまた、表の顔と裏の顔を持つ人物だ。 俳優がひとりのキャラクターの持つふたつの顔を演じ分けるというのは、観客/視聴者にとって非常にエキサイティングなものだ。その差異の大きさや表現のグラデーションによって、作品は何倍にもスリリングなものとなる。いずれの作品でも二宮はこのポジションを担っているのだ。かぎられた演技者にしかまっとうすることのできないポジションだろう。 しかし私がこの2作をとおして二宮から受けた衝撃は、このことだけではない。すでに出来上がっている作品の世界観に柔軟に溶け込みつつ、「高野龍之介」と「カミキヒカル」という個性的なキャラクターをじつにあっさりと立ち上げてみせていることに関してだ。ここから読み解くことができるのは、演技の場における俳優・二宮和也のキャッチボールの巧さだ。 基本的に演技とは、ひとりだけでは成立させることができない。さまざま状況に合わせて、セリフやアクションの投げ方や受け方を変えなければならない。この実現を前提として、ようやくキャラクターの個性を際立たせていくことが可能となる。『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』から参加した二宮は『インフォーマ』には出演していないわけだが、この続編を観ていると、高野龍之介はずっとどこかにいた気がしてくる。これをあっさりとやってのけるのが、演技者・二宮和也なのである。
折田侑駿