自主運行バス、富山地鉄が撤退 運転手不足、路線バス優先で今年度末
●堀川南、上条、婦中で「生活の足」存続模索 富山市の堀川南、上条、婦中の3地域の「地域自主運行バス」から、富山地方鉄道(同市)が今年度末で撤退することが、22日分かった。運転手の不足から、路線バスへの人員配置を優先する判断を下した。暮らしを支える「生活の足」の存続へ向け、3地域は岐路に立たされている。 富山市の「地域自主運行バス」は呉羽、水橋、堀川南、上条、婦中の5地域にあり、公共交通の不便な郊外の移動手段として、各地域単位の協議会によって運行されている。堀川南、上条、婦中の3地域はこれまで富山地方鉄道に委託し、バスを運行してきた。 3地域のバス本数は、1ルートを運行する堀川南が月~金曜の1日8便、2ルートの上条が月・水・土曜の1日5便。4ルートの婦中では、月~金曜に1日計14便が運行されている。運行に掛かる資金は、沿線住民から集める協力金によって賄われるほか、市が一部を助成している。 関係者によると、富山地鉄から今年夏、堀川南、上条、婦中の各協議会に対し、来年度はバスの運行を受託しない旨の連絡があり、3地域は新たな道を模索することになった。 3地域のうち、堀川南は別の事業者に委託できる見込みで、上条は地元で運転手を募集して運行を続けたい意向だ。一方、婦中は来年度の見通しが立っておらず、協議会の担当者は「地域だけで全てを担うのは難しい」と悩ましげに話した。 ●富山市が支援 地域自主運行バスの継続をめぐっては、市も支援を行う。二種免許を持たない地域住民もドライバー業務や運行管理を担えるように検討するほか、富山地鉄から車両を借りている堀川南、上条へ10人乗りワゴン型の中古車両を購入する。市の担当者は「地域で公共交通を主体的に担う形をつくっていかないといけない。市も協力していきたい」と述べた。 ●24年問題影響、大型二種免許の保持者貴重 富山地鉄の撤退の背景には、運転手の残業規制が強化された「2024年問題」がある。 働き方改革の一環の「24年問題」は、4月からドライバーの時間外労働に対し、法律で年960時間の上限規制が課されたことに伴う問題で、輸送・運送事業者に慢性的な人手不足を招いた。 富山地鉄の場合、バス運転手は10月1日現在で定員209人に対し、183人と充足率は87・6%にとどまる。こうした状況を受け、同社は10月のダイヤ改正で平日80、休日25の路線バスの減便を敢行した。 富山市の地域自主運行バスで、同社は呉羽、堀川南、上条、婦中の4路線で運行委託を請け負う。このうち年度内に撤退する堀川南、上条、婦中の3路線では計7人が運転を担う。 撤退する3路線のバスはいずれも大型二種免許が不要なワゴン車。普通二種免許があれば運転が可能であり、貴重な大型二種免許を持つ運転手の人員を路線バスに回した方が得策と判断した。中松清孝運行管理課長は「今回の撤退は、路線バスの維持を最優先にした結果。申し訳ないが、理解してほしい」と話した。