『梨泰院クラス』『ヴィンチェンツォ』『私の解放日誌』など。心を震わす名作韓ドラには“22人分”の秘密があった!
「発売されたら絶対に買う!」と決めていたこちらの本。『韓国ドラマを深く面白くする22人の脚本家たち』です。韓国書籍を取り扱うクオンから出版されています。私がかれこれ20年以上Kドラマにどっぷり浸かっていることはさておき、想像以上に内容が濃く、端的に素晴らしすぎた! このレベルの22人の売れっ子脚本家の記事を見られるなんてそうそうないですし、韓ドラ好きはもちろん、日頃から文字に触れる機会が多い人や、脚本家志望の人も見て損はしないというかインスピレーション源になるのではないかと思う、そんな本です。 【写真】【泣ける名作韓国ドラマ23選】韓ドラのプロが選ぶ! 一生に一度は観たい、泣けて心に沁みる良作ドラマ
日本でも大ヒットした、あのドラマの誕生秘話に心躍る
潔く、わかりやすすぎるデザインにもグッと来ます。日本リメイク版が制作されたことでも、日本人にとってより馴染み深い『梨泰院クラス』や、「私を崇めて」という名言を生み出した名作ヒューマンドラマ『私の解放日誌』、主演級キャストが大集結し、チェジュ島に暮らす人々の人生を丁寧に描いた『私たちのブルース』。アン・ボヒョンとキム・ゴウンの最高値のケミに加え、実写×アニメーションという挑戦的な演出方法をなんの違和感なく、それどころか感情移入しまくり状態にさせられる現代ロマンス『ユミの細胞たち』などなど。それはそれはもう、名作中の名作ばかり!なドラマの名が連なっているんです。韓ドラ好きは作品名を見ただけで笑みが溢れてしまうのではないでしょうか。超大御所から若手実力派まで、22人もの(忙しすぎる)脚本家たちにインタビューするなど、並大抵のことではないことを重々承知しているため……(涙)、ハンギョレ新聞社『ハンギョレ21』と姉妹誌の『シネ21』の皆さんに心から感謝を述べたい!! 脚本家それぞれのルーツを知ると、ますます作品への愛着が湧いてくるというか。例えば『梨泰院クラス』。パク・ソジュン演じるイガグリ頭のタフガイ、パク・セロイと宿敵の長家グループとの闘いを描いた物語でしたが、チョ・グァンジンさんによると、セロイのイメージは自身の母だったとか。『二十五、二十一』など、様々なドラマのモチーフにもなっている1997年のIMF通貨危機のあおりを受けたグァンジンさん一家は、南原(ナムウォン)への移住を余儀なくされ、都会の生活から一転したそう。そんな苦しい状況のなかでも「貧しさを感じずに夢を見ながら成長することができた」のは、いつも頼もしく支えてくれた母のおかげと話している。『SLAM DUNK』『NARUTO-ナルト-』『ONE PIECE』を読みながら伸び伸び育ったというグァンジンさんをはじめ、日本文学や漫画からインスピレーションを得たと話す脚本家がたくさんいるんです。 ヒューマンドラマの巨匠パク・ヘヨンさんが描く不朽の名作『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』『私の解放日誌』。誰も触れることができなかった韓国の兵役制度の闇に食い込んだキム・ボトンさんの『D.P. –脱走兵追跡官–』。「自分の仕事で誰かを傷つけるようなものを書かないように」と視聴者に最大限の敬意を払いながら、社会問題への問いをスリラーサスペンスで描いたキム・スジンさんの『怪物』。母になった経験を活かし、歴史ドラマに性的マイノリティをしなやかな演出で強く表現したパク・バラさんの『シュルプ』etc.。語り出したらキリがないくらい、どの作品も現代社会が抱える問題点をうまく盛り込みながら視聴者に投げかける、そんな作品ばかりです。 台詞ひとつ取っても、それぞれの脚本家がこれまでの人生からヒントを得た言葉もあれば、今後の社会への思いを乗せた言葉もある。キャラクターを介して視聴者や社会に伝えたいことは何なのか? 改めてもっと深く、注意深くドラマを観ていきたいと感じました。