<春を駆ける>高知 センバツへの軌跡/中 基礎に戻り意識改革 /高知
「自分たちは決して強くない。『下』なんだ」。そんな意識から、高知の選手らが新チーム結成後のミーティングで決めたチームテーマは「下克上」。ただ、「チームの核となる選手がいない」という切迫感も募らせていた。「自分たちの代には先代と違い、主力となるような選手はいない。一人一人が『俺がやらないといけない』という意識を持たなければやっていけないという思いがあった」と山下圭太選手(2年)は振り返る。 浜口佳久監督は、新チーム結成直後はあえて主将を決めず、日野灯、高橋友、谷崎陽――の2年生3選手に日替わりで主将を務めさせ、新人戦前に谷崎選手を主将に決めた。「良くも悪くも自分を持っていた。チームファーストの気持ちがあり、(チームを)同じ方向に向かせることができる」と指名した理由を話す。 新人戦は新型コロナウイルスの影響で中止となり、初めての公式戦となったのは秋季四国地区高校野球大会県予選。初戦の相手は土佐高校だった。「3年生のためにも甲子園へ」。強い決意で臨んだ大会だったが、選手たちは初戦から思わぬ苦戦を強いられる事になる。 ◇ 「これで負けてしまうのか?」。谷崎選手は八回裏の攻撃が終わったあと、スコアボードを眺めながらこう感じた。表示されているスコアは3―6。甲子園どころか、脳裏には「初戦敗退」の文字もちらつく。「行くしかない」と気持ちを奮い立たせて臨んだ最終回の攻撃。相手投手の制球の乱れにも助けられ、一挙に4点を返して辛くも勝利した。だが、選手たちには危機感が広がっていた。「このままでは勝てない」 その日のミーティングでは、土佐戦の反省点を話し合った。初めての公式戦での緊張、「自分たちの方が上だ」という驕(おご)り、守備からリズムを作れていないこと――。さまざまな原因が見つかり、最終的に出した結論は「基礎からやり直す」だった。 以降、練習後の自主トレに最後まで参加する選手たちが目に見えて増えた。それまでは監督に言われてただこなすだけだった練習メニューも、選手自ら足りない部分を考案して、監督に申し入れた。「土佐戦以降『意識』の部分で大きく変わった」(高橋選手)。新チーム結成時のテーマである「下克上」を本当に実現するため、チームは再出発を誓った。【小宅洋介】