杏さんが映画『かくしごと』で演じた直球の母性。「このタイミングなら演じられると思いました」
日頃から子どもたちに伝えている「親も絶対ではない」ということ。
育児にまつわる社会問題を描いてもいる本作。3人の子どもを育てている最中の杏さん自身、どうしたら子どもが安心できる世の中を実現できるのか、思いを巡らせる機会も多いという。「育児は言ってみれば、ベルトコンベア式。大体のケースにおいて、子どもは成長するにつれてできることが増えるので、親にとって、その時々の悩みは一過性で終わってしまう。それで、問題が表面化しづらいんじゃないかと思うんです。私自身、子どもたちがまだ赤ちゃんの頃、何に困っていたかと考えると、記憶が薄れていて。新たに親になった人たちは、また同じことで悩むというその繰り返し。だから、今自分が感じていることを忘れず、考え続けなくちゃ、と。その上で投票に行くとか、積極的に意見を言うとか、世の中を変えるチャンスがあるなら、行動できる自分でありたいなと思います」本作の撮影が終わった直後から、杏さんは子どもたち、そして愛犬とともにフランスでの生活も始めた。ニュース一つとっても、日本との違いを感じるそうだ。「フランスと日本のニュースを両方チェックし、同じ話題について、どちらでどう報道されているかを見比べています。最近は日本のネットニュースを読み、その話題性を判断しかね、友だちに聞いてみると、『そこまで大きい報道じゃないよ』と言われることもあったり。これから先、そういう国家間のギャップみたいなものが、私の中でどう積み重なるのか、またそれを埋める必要があるのかなど、自分でも興味があります。子育てのことでいうと、フランスは法制度や基本的な感覚として、子どもありきで社会を回すことが、日本以上に根づいているのかなと感じます」自身の子どもたちに伝えようとしているのは、「親も絶対ではない」ということ。「そこまで自信がないからというのもあるんですけど、『親だから偉いとか、言うことを聞かなければいけないわけではないから、間違いがあったら正してほしい』とお願いしたり、何か聞かれたら『一応答えるけど、それが正解かどうかは誰もわからないよ』と前置きしたりするようにしています」育児に家事に仕事に多忙ながら、生き生きと輝いている杏さん。とにかく体力勝負の時期だからこそ、気をつけているのは、しっかりと眠り、休むことなのだそう。「ショートスリーパー気味で、眠りの環境を整えようと、最近、睡眠アプリを取り入れました。睡眠の時間や、浅い/深いを計測・記録できて、生活習慣の改善に役立つんです。忙しい中で休みをいかに確保するかは、永遠の課題。以前は何もしない時間を持つことへ、どこか抵抗感がありました。仕事や予定を詰め込めば満足感も得られるけど、やっぱり限度がありますよね。体と相談しながら、なるべくゆとりを保とうとしているところです」30代後半の充実した日々を過ごしている今、少し先の40代に向けてはどんな準備をしているのだろう。「ケアは必要だなと思っています。体力作りはもう始めていかなければ。20代は仕事に途切れ目がなく、数本の作品が同時に重なることもありました。でも、今はそれが物理的にできないので、どれだけ一本一本を深く追究できるかに注力したいです。素敵だなと思う歳上の方たちは、やっぱりスタミナがあって健康的。あとは、優しくて思いやりがある方にも惹かれます。話しかけやすい、垣根の低さがあるというか。私自身もそういう人間性を大事にしたいです」