認知症や急激な老化を呼ぶ免疫暴走が起こる真因 免疫が処理できないほど体内にゴミが溜まる恐怖
たとえば、ある細胞が担っている仕事が、まっすぐな形のタンパク質をつくることだったとしましょう。このタンパク質は、わりと複雑な工程を経ないとまっすぐに伸びてくれないとします。それでも通常であれば、たとえ面倒でも彼らは一つひとつまっすぐに伸ばして一生懸命出荷します。 ところが、ミトコンドリアが減ってエネルギー不足に陥り、細胞自身がすっかり疲れ果ててしまうと「ああ、めんどくさい! もういいや、このままで」と言わんばかりに、手抜き仕事を始めます。つまり曲がったままのタンパク質を出荷してしまう。こうして、タンパク質の不良品工場が出来上がるわけです。
こうなると、その後の工程が詰まります。通常、それぞれのタンパク質にはそれぞれに合った酵素があり、それらによって分解されるのですが、曲がったものが来ると「あれ、これって、どの酵素が扱うんだっけ」と混乱に陥ってしまうのです。 ■人体で壊せずどんどん蓄積される状態に ③不良品もまたゴミに。それが集まってさらには… この不良品は、まさに体内のゴミに。分解できないから使い道もなく、ただただ溜まっていき、大きな塊をつくってしまう。こうなると攻撃免疫にも壊せません。しかも老化が進んだ攻撃免疫では、なおのこと歯が立たない。
タンパク質にはもともと水に溶ける性質があり、変に熱がかかるとグチャグチャのまま固まってしまいます。生卵は水に溶けても、熱して炒り卵にすると溶けませんよね。あのイメージです。この状態になると、もう体内では壊すことができず、どんどん蓄積されるようになっていきます。 その典型的な例が、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβというタンパク質です。アミロイドβは健常な人の脳内にも存在しますが、アルツハイマー患者の脳の血管には、アミロイドβ同士がさらにたくさんくっついて塊になった「アミロイド斑(老人斑)」が溜まっています。脳内に、炒り卵をガチガチに固めて巨大化したようなものがたくさん溜まった状態が、アルツハイマー型認知症なのだとお考えください。