さらなる「改悪」も…公取委の再調査で淘汰が始まる「クレカ業界」の生き残り作戦と勢力図
日本のキャッシュレス化が進まない「本当の理由」
「割高」とされてきた国内のクレジットカードの手数料。それが、今、大きく変わろうとしている。数年前から、公取委がたびたび俎上に載せてきたことに加え、キャッシュレス業界のシェア争いの影響で、自ら手数料を引き下げる動きが出ている。こうした動きは、加盟店にはメリットをもたらす一方、ユーザーにとってはサービスの改悪につながり、ひいてはカード会社再編の可能性が出てくると、専門家は指摘する。 【衝撃!】ステイタスのはずが…ゴールドカード保有者の個人年収が? ◆5%以上も!? 飲食店でカードが使えないのは「割高な手数料」のせい 10月10日付の日本経済新聞(電子版)で、公正取引委員会がクレジットカードの手数料率について調査に入ると報道された。今回は、手数料がとりわけ割高な飲食業界をおもな対象とするという。 国内のクレカの手数料は、実際、割高といえる。経済産業省のキャッシュレス推進室が’22年3月に公表した報告書によると、手数料の平均は欧州1%台、米国では2%台が多いが、日本は3%を超えているという。しかも、日本は手数料5%以上(!)が加盟店の約1割に上っている模様で、その多くが小規模の飲食店だと推測されている。 飲食業界の利益率は低く、上場企業の平均値でも5%程度。クレカの手数料は大きな利益の圧迫要因になっており、大手外食チェーンを含めて、クレカ利用不可の飲食店はまだまだ多い。キャッシュレス決済を推進する政府としては、さらなる普及のために、手数料率を引き下げて、利用できる店舗を増やしたい意向がある。 ◆手数料「引き下げ」へ…動くカード会社や決済代行業者も こうした政府の意向を汲み取るかのように、先んじて手数料を引き下げる動きも目立ってきた。三井住友カードは、11月から、中小企業や個人事業主を対象に、VISAとマスターカードの加盟店手数料を1.98%に引き下げた(「初めてクレカ決済を導入する」「スマホのタッチ決済に限る」などの条件あり)。 さらに、店舗に端末を設置して決済システムを提供する決済代行業者の動きも顕著で、Square(スクエア)は、11月からVISAとマスターカードを11月から3.25%→2.5%に、テレビCMでおなじみのAirペイは、12月から主要国際ブランドを3.24%→2.48%に、それぞれ引き下げる予定。いずれも中小事業者向けの手数料としている。 ◆電子マネー⇒コード決済…日常生活で最も身近な「少額決済」市場を巡る競争 カード会社や決済代行業者の手数料引き下げは、もちろん、政府の意向も影響しているだろうが、別の背景もある。「少額決済」市場を巡るシェア争いだ。少額決済とは、明確な定義はないが、数百円から千円前後までの〝少額〟に対応する支払いのこと。コンビニの弁当やカフェでのコーヒーなど、日常生活で最も頻繁に行われる支払いで、現在、この少額決済でより多くのユーザーに使われることを目指して、各陣営が鎬を削っている。 少額決済市場は、長らく『Suica』をはじめとする電子マネー勢が覇権を握っていたが、’22年に、QRコードやバーコードを使った「コード決済」が、その地位に取って代わった。経済産業省が毎年発表しているキャッシュレス決済比率をみると、’23年は、電子マネーの決済額6.4兆円に対し、コード決済は10.9兆円とその差は拡大している(グラフ参照)。 ◆強力なライバル「タッチ決済」…コード決済は「三日天下」で終わる? だが、順調にシェアを拡大していたコード決済に、早くも昨年頃から強力なライバルが台頭する。クレカの「タッチ決済」だ。タッチ決済の決済額はクレカに含まれるので、タッチ決済だけのシェアは不明だが、最近の各種調査では、クレカ利用者の約半数は日常的にタッチ決済を利用している模様で、すでに少額決済市場でのコード決済のシェアを上回っている可能性がある。