酔った道長からの“和歌ハラスメント”紫式部の「見事な返し」。歌を聞いた道長はどんな反応だったのか
また、当時、紙は高級だったにもかかわらず、彰子が式部にどんどん与えたので、道長は「もったいない……」と愚痴をいいながら、式部をこう責めている。 「あなたは奥に引っ込んでいるように見えて、こういうところはちゃっかりしておる」 しかし、そんな言葉とは裏腹に、上質な紙、筆、墨などを与えてくれたという。ぶつぶつ言いながらも、娘のアイデアにつきあう道長が何ともおかしい。 ■道長は「憎めないけど面倒なオジサン」
そうかと思えば、式部がいない間に、道長は勝手に部屋に入り、式部が冊子づくりのために実家から持ってきていた『源氏物語』の原稿をもっていき、次女の妍子に全部あげてしまうという、暴挙に出ている。 感情表現が豊かで、行動が読めない。道長は、親戚に1人はいそうな「憎めないけど面倒なオジサン」といったタイプだったのかもしれない。そして、そんな道長は、奥ゆかしいようで行動が突飛な紫式部と、意外と馬が合ったのではないだろうか。
【参考文献】 山本利達校注『新潮日本古典集成〈新装版〉 紫式部日記 紫式部集』(新潮社) 『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫) 『藤原行成「権記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫) 倉本一宏編『現代語訳 小右記』(吉川弘文館) 今井源衛『紫式部』(吉川弘文館) 倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社現代新書) 関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝』 (朝日新書)
真山知幸『偉人名言迷言事典』(笠間書院)
真山 知幸 :著述家