人類を脅かすプラスチック汚染、生産規制、問題プラ禁止めぐり条約交渉が大詰めに
生産規制とともに重要なテーマの一つが、特定の化学物質・製品の規制のあり方だ。これまで環境中で残留性や生物蓄積性、生物や人体への有害性などが懸念される化学物質については、「ストックホルム条約」により規制されてきた。現在、国内で輸入、製造、使用されている数万種類にのぼるとも言われる化学物質のうちで、条約で規制対象となっている化学物質の数は数十種類にとどまる。 そこで今回の条約交渉では国際的な統一基準を設けたうえで、有害な化学物質や、不要な使い捨てプラスチックをリスト化し、国際的に禁止すべきだという主張がなされている。ここでも、規制に反対の立場の産油国と、EU、アフリカ諸国などとの間で意見の隔たりが大きい。
もう一つの焦点が、プラスチック汚染対策の資金をどの国が多く負担するかという問題だ。新興国や開発途上国は先進国に多くの負担を求める一方、日本を含む先進国はそうした考えに距離を置いている。また、途上国は、資金面での政府の役割を重視する一方、先進国側は既存の支援制度の枠組みの活用や、民間を含めた多様なセクターが関与する必要性を強調している。 ■骨太の内容の条約で合意できるか そうした中、わずか1週間の会期で条約案の合意ができるのか、前途が危ぶまれている。そのことを物語るように、10月30日に明らかにされた条約交渉の議長による非公式の条文案は、記述内容が不完全なものになっている。
というのも、プラスチックの生産規制や、プラスチックに使用される懸念のある化学物質の規制、資金メカニズムの設立を含む資金調達という3項目については、意見の隔たりが大きいことが理由で、条文案に含まれる要素を列挙したにとどまっているためだ。 プラスチックの生産に関する条文については、「そもそも何をこの条文に入れるのか、この条文が必要なのかといったことから、議論を始めなければならない状況にある」(環境省の小林豪・プラスチック汚染国際交渉チーム長)。