人類を脅かすプラスチック汚染、生産規制、問題プラ禁止めぐり条約交渉が大詰めに
だが、ペットボトル以外のプラスチックに関する取り組みは壁に直面している。プラスチック製品をリサイクルして再び製品化する「水平リサイクル」については国内での再生ポリエチレン原料の調達がままならず、再生原料を輸入に依存しているという。 「飲料用のPETボトルを除いてプラスチックの水平リサイクルシステムが確立していない日本では、企業としての取り組みに限界がある。日本はヨーロッパと比べても後れを取っている」(松井氏)
なお、リサイクルだけでは解決のできない問題も多く、容器包装の削減や商品の提供方法の見直しも必要になってこよう。 ■プラ条約交渉は、国際協調の正念場でもある 気候変動やプラスチック汚染問題などの国際交渉に、国際環境NGOの一員として関与してきたグリーンピース・ジャパンの小池宏隆シニア政策渉外担当は、今回のプラスチック汚染条約の交渉について、「多国間協調を機能させるうえでもきわめて重要だ」と説明する。
プラスチックは今後も生産量が増え続ける中、プラスチックの生産や消費、廃棄などのライフサイクルベースで排出されるCO2 は大きな割合になりつつある。今年4月に発表されたアメリカのローレンス・バークレー国立研究所の推定によれば、2050年には地球の平均気温の上昇を1.5度に抑えるうえで許容されるカーボンバジェット(炭素予算)のうちの2~3割を、製品や製品原料として使用するための一次プラスチックの生産が占めるようになるという。プラスチックは化学物質の問題で人間や生物の健康を脅かすだけでなく、気候変動問題とも深くかかわっている。
また、アジアやアフリカなどの途上国には、先進国で発生したプラスチックごみが輸出され、焼却による大気汚染や河川、海への流出といった公害問題を引き起こしている。こうした国を超えた問題は、「世界共通のルールがなければ解決できない」(小池氏)。 ルールができれば、対策を実施するための資金も必要になる。そこでも国際間の合意が必要だ。 日本の責任も重い。日本の容器包装プラスチックごみの1人当たり排出量はアメリカに次ぐ世界第2位であり、廃プラスチックの輸出(2023年)でもドイツやイギリスに次ぐ世界第3位となっている。日本はリサイクルを中軸としたサーキュラーエコノミー(循環経済)を標榜しているが、実際は大量生産・大量廃棄から脱却できていない。
きちんとした条約で合意するためにも、日本にはリーダーシップを発揮する責務がある。
岡田 広行 :東洋経済 解説部コラムニスト