若年層が増加する業種!「チェーンソーがうなる現場」を見にいく
日本の全産業で若年層が減るなか、逆に増えている業種を中小企業診断士の塩谷健氏がレポートする。 近年、林業の世界では若年層の増加が注目されている。昭和55年から令和2年にかけて、全産業では業界の若年者率が減少の一途をたどっているが、林業における若年者(30歳未満)の比率は増加してきたことが分かる。 この30年、私の知る限り、就職先として林業を検討しているといった話を聞いたことがなかった。しかし、自分が林業に関心を持つようになって業界に入っていくと、高齢になってから林業に入る人たちに紛れ、自分の子供たちと変わらない年齢の若者と結構出会うことに驚いた。興味を持った私は林業を教えてくれている講師にその話をすると、若者が活躍しているチェーンソー競技会というものを紹介してくれた。 動画で見たその彼は、ドイツのSTIHL社製で排気量が70cc以上もある大きなチェーンソーを自身の手のように扱っていた。講師が教えてくれた彼の名は今井陽樹(ひのき)さん(39)、日本を代表するチェーンソーマンであり、NPO法人ロガーズの代表である。 今井さんは日本のチェーンソー競技会の先駆者ともいえる存在だ。日本では全国森林組合連合会が開催する2年に1度の日本大会しかない時代に、「隔年の競技会だけではチェーンソー技術を高めることが難しい」と考え、2016年に自分で競技会を立ち上げてしまった。「鬼石伐木チャンピオンシップ(現ロガーズカップ)」だ。 競技は「枝払い」「丸太合わせ輪切り」「ソーチェン着脱」「伐倒」「接地丸太輪切り」の5種目。近年は2回開催し、来年4月で14回目になる。チェーンソーは、木材の伐採、あるいは加工に使われるのだが、非常に危険な工具であり、メンテナンスにも相当手間のかかるものでもある。その鍛錬や手間を怠ると怪我では済まず、命を落とすこともある。 NPO法人ロガーズは、「チェーンソー競技が若い林業従事者の活躍の場にもなることで山の仕事が受け継がれ、日本の基盤を担う次世代たちが社会に大きく貢献するようになること」を目的に2019年に今井さんが設立。現在、下は20代から上は60代まで、総勢25名の会員になった。 主催する競技会は、初年度5名でスタートしたものが、現在は20名まで拡大。北は北海道から南は宮崎まで全国から参加者が集まり延べ400名近くが技を競った。皆、林業従事者であり、まさに鍛錬の成果をお披露目する機会となっている。