アカデミー強化のキーマン2人が共有する育成の真髄とは? J1初挑戦のFC町田ゼルビアが招聘した「ラストピース」
「サッカー観が同じ」2人の指導者が生み出す相乗効果
2021年からアカデミーダイレクターを務める菅澤氏も、育成界ではよく知られた存在だ。永田氏とは25年来の指導者仲間で、キャリアにも共通点が多い。 東京Vと千葉、名古屋グランパス、京都サンガF.C.、ロアッソ熊本などのアカデミーで指導し、2018年から3年間、2部のちふれASエルフェン埼玉(現WEリーグ)の監督を務めた。森本貴幸や小林祐希、久保裕也、井出遥也、そして現在なでしこジャパンで10番を背負うMF長野風花ら、多くの教え子をプロの世界に送り出している。 リバプールで2シーズン目を迎えた長野は、菅澤氏の指導を受けた埼玉での2シーズンを自身のターニングポイントに挙げている。 「本当のサッカーを教わりました。守備の立ち位置やボールの止め方など毎日のように映像を見せてもらって、考えてプレーするようになりました。毎日新しいことを学べることがすごく楽しかったです」 菅澤氏も、「男女で指導の方向性や練習は変わらない」という。だが、女子を指導することで変化したこともある。 「言葉の選び方は変わりました。男子だと多少なりともピリッとさせないといけない場面で、同じように接すると距離が空いてしまうことが多く、どちらかというと、選手たちからいじられるぐらいがいいのかなと思うことも。そういう引き出しは増えたと思います」 そうして増やしてきた指導の“引き出し”を共有する菅澤氏と永田氏は、互いを尊敬し合う「親友」であり、菅澤氏は「サッカー観が同じ」と言い切る。家も近所で、グラウンドを離れても日々サッカー談義を重ねてきたという。 「新しい練習を思いついたら、動画を作って『どうだ!』という感じで送り合っています(笑)。指導の表面的なところだけではなく、深いところまで理解し合える数少ない仲間です。自分も元々はそっち(現場)側なので、羨ましいと思うこともありますけどね」 今はアカデミーダイレクターという立場上、監督やコーチと違って選手に言葉が届きにくい。そのことを慮るように、永田氏が言葉を添えた。 「大我とはサッカーを面白いと思うところが似ていて、単純に『ボールを持つためにどうするか』ということだけではなく、『サイドバックがどういうふうに体の向きを作ったら1対2を優勢に持っていけるか』とか、複雑な組み合わせの細かい連係部分の作り方など、同じ目線で見られる部分が多くあります。だからこそ、今回(町田に)呼んでもらったのは、大我が現場でできないところを任せてもらう、ということだと思っています」