パリコレでファッションの未来を実験し続ける「ユイマ ナカザト」 ドキュメンタリー映画が公開
パリコレはファッションの歴史にページを足せるチャンス
WWD:オトクチュールは、デザイナーのメッセージを支持するパトロンがいて成り立つ。中里さんが考える革新をどんな人に着て、世界に伝えてほしいと思う?
中里:普段「ユイマ ナカザト」を選んでくれるのは、表現者や研究者。例えば慶応義塾大学医学部教授の宮田裕章さんのように、社会に対して特殊な眼差しを持っている人が多い。そういう人は大勢はいないかもしれないが、そういう人たち一人一人に服を届けられている状態は心地よい。宮田さんは「ユイマ ナカザト」を着ることで、男性が装飾をまとうこれまで社会であまりみられなかった現象を体現してくれている人だ。特に最近は、アジアの男性セレブがレッドカーペットの衣装に選んでくれていることもうれしい。
WWD:今後もパリでの発表を続ける?
中里:もちろん葛藤もある。ただパリには過去のデザイナーたちが積み上げてきた歴史があり、半年ごとにその1ページが更新されている。あの場所で自分がもう1ページ何かを付け足すことができるのは1つのモチベーションだ。過去の偉大なデザイナーたちは、ファッションの力で社会や価値観を変えてきた。彼らが裏付けてきたファッションの変革する力に勇気づけられるし、自分もいつかそういうことしたいと思う。今は半年に一度投げかけるチャンスがあると捉えている。