「ミツバチ絶滅で人類は滅びる」ハチミツだけではない、知っているようで知らないミツバチのこと
「ミツバチが減っている」という環境劣化を思わせる情報を見かける。「農薬によるミツバチ大量死」「ネオニコ系殺虫剤の影響」といった農薬によるミツバチ被害を指摘する記事も度々出ている。 【図表】ミツバチによる経済効果 では、なぜこれほどまでにミツバチの減少が危惧されるのか。ハチミツが食べられなくなるからだけでは決してない。アインシュタインが「ミツバチがいなくなったら、人類は4年で滅びる」と語ったほど、ハチは私たちの生活にまつわる様々な役割を担っている。 ミツバチは人間社会に何をしてくれているのか。ミツバチの経済効果や農薬被害を減らす取り組みなど、知っているようで知らないミツバチの世界を追ってみたい。
ミツバチは増えているのか、減っているのか
養蜂家が飼育しハチミツを食卓に届けてくれるほとんどのハチはセイヨウミツバチで、彼らは自然界では生きられない農林水産省畜産局が管轄する家畜である。蜂群の増減は、主に養蜂家数と飼育状況や技術に起因している。ハチが減っていることと環境を直接的につなげるのは適切ではないのかもしれないが、ここのところの酷暑は大きな影響があるようである。 日本の養蜂業の動向をみると、2012年の飼育戸数5934戸から、15年に9567戸、23年は1万1416戸と増加の一途をたどる。しかし、群数でみると、12年は18万4000群から14年の21万群へと増加してから6年間横ばいが続き、22年は24万2000群となったものの、23年は23万7000群と減少している。 これは養蜂家が増えたのではなく、趣味で数箱のハチを飼っている人も届け出ることになったからだ。そのため、1戸あたりの平均群数は約30から20と減っている。
食料生産に大きく貢献
日本のハチミツ消費量は年間約5万トン。そのうち国産は5%で、残りは輸入となっており、輸入の半分以上が中国からだ。 ミツバチはハチミツだけでなく、蜜蝋(みつろう)やローヤルゼリーを私たちにもたらしている。蜜蝋とは、ミツバチの巣から採取される蝋で、ロウソクやワックス、化粧品、クレヨンの原料として使われる。ローヤルゼリーは女王蜂のみが食べているもので、人の健康に不可欠な必須アミノ酸や各種ビタミン・ミネラルを豊富に含み、健康食品や化粧品として高価で取引されている。 また、ハチはこれらの生産物以外にも、農作物の花粉交配でも活躍している。春のウメやモモ、リンゴ、ナシ、サクランボなどの栽培のための受粉群だけでなく、野菜や果樹などの園芸農作物にはミツバチの受粉がないと栽培できないものが多い。タマネギなどの種子生産にも貢献している。作物栽培では、約6700億円の経済効果があると推計されている。 養蜂は食料生産においても重要な役割を果たす。ハチミツや蜜蠟、花粉交配などそれぞれを見ていっても、その生産額は大きい(表1)。