東大推薦合格も、秋田「博士号教員」の指導が凄い 県内の小学生から高校生まで探究をサポート
「探究指導法の体系化」「高校生のためのリファレンス」に意欲
大沼氏は、県内の博士号教員が自主的に立ち上げた組織「博士教員教育研究会」の代表も務めている。同会の目的は主に人材づくりにあり、県の事業目的に同会の意向を反映する形でさまざまな取り組みを行っている。 具体的には、知識や思考力を高める「科学教育活動」として出前授業のほか、ハイレベルな実験講座の開催や、「科学の甲子園」の予選を通過した学校への支援などをしてきた。また、「研究教育活動」として協調性や表現力の向上を念頭に、探究学習や研究発表会での指導を実施。さらに「研究支援活動」として、総合理解力やディスカッション力を磨くための研究相談事業を行っている。 「表向きは生徒に対しての指導ですが、先生も参加されますし、先生の科学教育における指導力を強化する狙いもあります。博士号教員だけで専門的な指導をするよりも、探究学習を担当している先生たちにスキルを上げていただき研究活動の底上げをしたほうが、生徒たちのメリットが大きいと考えます」(大沼氏) 確かに今、教育現場では探究学習が推進されているが、どのように研究を進めてよいのか悩む教員は少なくない。 「探究学習は正解がない教育です。これまで正解を導いてきた先生方にとってはストレスでしょう。これからは探究学習を担当する先生方への指導も考えなければならないと思っています。どんな指導をすれば生徒たちをうまく導くことができるのか、指導方法の体系化もやってみたいですね。また、すでに秋田県内の生徒の膨大な探究活動が蓄積されていますが、現状それを生かせていませんので、県内の全高校生が利用できる高校生のためのリファレンスもつくりたいです」(大沼氏) さまざまな成果を上げている博士号教員。一度配置された高校からは「手放したくない」、未配置の学校からは「うちにもほしい」といった声が寄せられると、石井氏は話す。しかし、予算の壁があり増員したくても難しいのが現状だという。 「教員不足の問題から授業数をかなり持ってもらっており、ご自身の研究に時間をさいていただく体制ができていない点も課題ですが、今後もこの取り組みを続け、教育県としての秋田の存在感をさらに高めていきたいと思っています」(石井氏) (文:國貞文隆、注記のない写真:遠藤金吾氏提供)
東洋経済education × ICT編集部