こんなはずでは…85歳父の介護に励むも〈53歳長男〉が後悔してもしきれない痛恨のミス。父の死後、2歳年下弟からの〈最後通牒〉に撃沈したワケ【弁護士の助言】
戦う手段が…ない。
誠さんは、康夫さんの遺産分割について、弁護士に相談しました。誠さんは、弁護士から、(1)遺言書がない場合、法定相続分に基づく分割が基本となること、(2)介護に対する寄与分の主張は可能であるが、自宅を取得するには相当額の代償金が必要となる可能性があることを告げられました。 誠さんは、聡子さんが元気だったときに自分が自宅を取得することに賛成してくれていたので、聡子さんの理解を得られるかもしれないと期待している旨を弁護士に伝えました。 しかし、弁護士からは、「後見人がついてしまった以上、後見人は、聡子さんの財産を守るための行動をするため、後見人が聡子さんの取得分を減少させるような協力を得られることはないだろう」と告げられました。誠さんは絶望的な気持ちになりました。
戦いの結果
誠さんは、遺産分割調停に参加して、自分が康夫さんの世話をしてきたこと、康夫さんも聡子さんも自分が自宅を取得することを望んでいたことを主張して、できるだけ代償金の金額を抑えて、自宅を取得したい旨を主張しました。 しかし、弁護士から指摘されたように、俊夫さんと後見人からは自宅を取得したいのであれば、法定相続分に従って代償金を支払うよう求められました。 俊夫さん側から提示された代償金の金額は高額でしたので、誠さん自身も街の不動産業者に自宅の評価額を相談しました。 その結果、俊夫さんの提示した評価額は、相場よりもやや高めではあるが、低めに見積もっても、到底支払えるような代償金の金額にはならないことがわかりました。 誠さんは、最終的に自宅を取得することを断念せざるを得ないと判断し、自宅を売却して分割するために、長年居住した自宅を出て行かざるを得なくなりました。
弁護士からのアドバイス
誠さんは、康夫さんの世話をし、康夫さんから自宅を取得してほしいと言われていましたが、結果的には長年居住してきた自宅を失い、家族の絆も失われてしまいました。また、誠さんに自宅を残したいと願っていた康夫さんの願いも叶えることができませんでした。 今回の件では、康夫さんが誠さんに対して、自宅を相続させるという内容の遺言書を残していれば、誠さんは自宅を取得することができました。 自宅以外に大きな財産がなかった場合、誠さんは俊夫さんから遺留分の請求を受ければ、遺留分の支払いを行う必要はありましたが、遺留分は相続分の半分ですので、自宅を売却しないですんだ可能性がありました。 以上のように、遺言書がない場合、残された相続人は思わぬ悲劇に見舞われる可能性があります。また、遺言書を作成しないまま亡くなると、思いを相続人に引き継ぐことができないこともあります。 遺言書の作成は、ご自身の意思を明確に伝え、相続手続きを円滑に進めるうえで必要不可欠です。もっとも、作成する内容によっては、法的な専門知識が必要となりますので、弁護士等の専門家のサポートを得ることで、ご自身の意向が反映された遺言書を作成することができます。 三浦 裕和 弁護士
板橋 晃平