1年間で100万トンの魚が廃棄 食べられるのに捨てられる魚「未利用魚」の実態
未利用魚を生かす
上柳:知らない魚、捨てられている魚「未利用魚」にスポットを当て、梛木さんはいろいろと工夫をされたそうですね。 梛木さん:でも1番は、本当にきれいごとじゃなく、漁師が儲かるようにしなくてはいけないと思っていたんです。漁師のお父さんが息子さんに「半分以上捨てるような、こんなバカみたいな仕事を自分の息子にはさせたくない。東京にいろ。帰ってくるな」と言っている状況なんです。だから、その捨てる魚をちゃんとしたお金で僕が仕入れて、儲けさせようと。 上柳:その試みは素晴らしいのですが、捨てる魚を買ったことで、梛木さんはえらいことになったそうで……。 梛木さん:えらいことになりました(笑) 上柳:普通、捨てる魚は1キロ10円とか20円のところ、梛木さんは1キロ350円で買ったそうですね。 梛木さん:1日に1トンとか2トンもの未利用魚が届くようになって、家賃を払って冷凍庫を借りました。 上柳:燃えたぎる気持ちが、本当に燃え盛る赤字の炎になってしまったと……。 梛木さん:そのときは後悔しかなかったです(笑)。魚を開きにしたりして商品を作ったんですけど、売れないんですよ。なぜかというと、もうブランドが出来上がっていて、土俵にすら乗りませんでした。 そこで『なにか変わったことをしなきゃ』と思って見つけたのが「灰干し」です。 上柳:著書の『捨てられる魚たち ―「未利用魚」から生まれた奇跡の灰干し弁当ものがたり―』とタイトルにありますよね。 梛木さん:「灰干し」には鹿児島の桜島の火山灰を使います。簡単に言いますと、下に火山灰を敷いて、その上に水と空気を通す特殊フィルムを敷いて、その上に魚を並べ、またフィルムをして、その上に火山灰を載せて、火山灰と火山灰でサンドイッチにして魚を寝かせるんです。 上柳:日に干す日干しと、この灰干し、味は違うのですか? 梛木さん:普通に干した魚は表面が黄色くなるんですが、あれは皮膚が酸化してる状態なんです。ですが、灰干しは空気に触れないので、ナマに近い状態で干し物ができます。だから臭みが少なくて食べやすいんですよ。 ――未利用魚の中には、食べたらおいしい魚がたくさんあるのに、知名度がないだけで廃棄されることも多いという。旅行へ行った時は、その地域でしか食べられない「地魚」を食べてみたり、普段の買い物でもいつもと違う魚を選んでみたりして、新しいものを食べる楽しさを体験してみてはいかがだろうか。
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