1年間で100万トンの魚が廃棄 食べられるのに捨てられる魚「未利用魚」の実態
「未利用魚」を知ったきっかけ
上柳:梛木さんは「未利用魚」をどこで知ったんですか? 梛木さん:僕の母方の家系がみんな漁師で、だから小さい時から、おじいちゃんの船に乗って釣りに行ったりしていたんです。釣れた魚を市場に卸すんですけど、「これは卸す」「これは卸さない」っていうのがあって、小さい時から『なんでこれは卸さないのかな?』と思っていたんです。 市場に卸さなかった魚は家に持って帰って、みんなで食べていたんですが、とてもおいしかったんですよ。 上柳:そういう環境がずっとあったんですね。 梛木さん:私は日本料理の師匠から、「おいしい食材はおいしくて当たり前だ」と言っていて、「捨てるようなものをおいしくさせるのが本当の料理人だ」ってよく言われていたので、自分たちの仕事だと思っていました。 また、私は港町で育ちましたし、漁師の数がかなり減っていることをずっと感じていて、実際にここ30年で6割ぐらいの漁師さんが廃業している、という数字も見ると、20年後や30年後には漁師さんがいなくなるだろう、という危機感を感じています。やっぱり食材が無いと、私たち料理人の仕事は成り立たないので。 上柳:そうですよね、漁師さんがいいお仕事をしてくださるからこそ、料理人は腕を振る舞えますもんね。1988年から2018年の30年間で、漁業に携わる方の人数は半分以下となったそうですね。 梛木さん:そうなんです。 上柳:たしかに、若い方の姿を見かけないですよね。未利用魚とか漁師さんとか、いろんなものを守りたいという気持ちがあって、今の活動に繋がっているのですね。
高級魚「ノドグロ」も昔は捨てられていた
上柳:捨てられた魚がある一方、今すごい重宝されている魚があるそうですね。 梛木さん:結構あります。代表的なものでいうと、アカムツ(ノドグロ)ですね。 上柳:ノドグロ、昔は捨てられていたんですね! 梛木さん:今はとても人気ですが、昔は「脂臭い」と言われて捨てられていたんですよ。 上柳:ええっ! 梛木さん:でも、芸能人や有名人の方が「この魚、うまい!」っていろんなところで言って、そこから一気に大出世しました。だから、食べたらおいしい魚って、いっぱいあるんです。 上柳:見た目が見慣れていない、名前を知られていないだけで、第二のノドグロはたくさんいるんですね。 梛木さん:そうです。今ではノドグロは値段も高いですよね。 上柳:あと、東京湾でやたらと釣れている「タチウオ」。これも昔はあんまり食べなかったですが、おいしいですよね! 梛木さん:タチウオはお刺身でもおいしいですよね。 上柳:日本人が珍重する魚って、タイ、マグロ、サンマ、カツオ、サバとかですが、それ以外の魚をあまりにも知らない、知識が無いなって思いました。