「墓石」に振り回される日本経済 主要指標「家計調査」に見えた異常事態
海外でも主要経済指標として注目される日本の家計調査に異変
まず、家計調査の基礎情報を整理します。この統計は家計の収支状況を把握するための指標で総務省が毎月公表しています。世帯ごとに家計簿をつけてもらうことで、個人消費を需要側(財・サービスを購入する人)から捉えることを目的としています。そこで集計された数値はGDP統計の個人消費を作成する際の基礎データとなること等から非常に注目度が高く、海外投資家も重視していると聞きます。実際、金融の専門家が愛用する米系情報会社が提供する端末でも、この家計調査は“主要”経済指標として扱われています。 以下で、この家計調査の問題点を指摘するのですが、それに先立って今年の5月と8月の公表資料の一部をみてみましょう。ここで抜粋したのは、その月の消費の増加・減少に寄与した主な品目です。
注目すべきは5月と8月に「葬儀関係費」、「外壁・塀等工事費」が2回もランクインしていることです。この結果を額面通りに解釈すると「日本の消費は葬儀関係費、外壁・塀等工事費の不振により減少した」、となるのですが、これは明らかに違和感があります。これは何を意味しているのでしょうか?
この家計調査の問題点は、サンプル数の少なさです。日本の世帯数は約5000万あり、この内訳は単身世帯が約1300万、2人以上の世帯が約3700万ですが、このうち家計調査が集計しているのは、単身世帯がわずか750世帯、2人以上世帯が僅か8000世帯と極めて限られています。要するにサンプル数が全体の0.1%以下と異常に少ないため、統計が振れやすいのです。たとえば8000世帯のうち、複数の世帯が同時に「葬儀」を行えば葬儀費用は急増しますし、葬儀が少なければ激減します。この1年、ランキング上位に頻繁に登場しているのは「葬儀関係費」、「授業料」、「墓石」、「外壁・塀等工事等」などです。こうした非日常的な品目がランクインすることは、サンプル数の少なさによって統計が歪められていることを浮き彫りにしているでしょう。