DC制度の環境整備について中小企業向けに制度普及をはかる、「総合型DC」の創設に道筋
社会保障審議会の企業年金・個人年金部会が7月31日、「DC(確定拠出年金)制度の環境整備」をテーマに開催された。主に、中小企業に対する企業年金制度の普及を促すため、DC制度の面から促進策はないかという観点で議論され、「簡易型DC」、「iDeCo+」、そして、「いわゆる総合型DC」などのあり方について委員から様々な意見が出された。そして、企業型DCを取り入れるにあたって大きな課題になっている「加入者への投資教育」については、今年8月に本格稼働が予定されている「J-FLEC(金融経済教育推進機構)」とも連携の上で、効果的な方策を検討する方向だ。
DC制度は、米国で企業型DCが「401k」という呼称で知られ、広く普及している。従業員が給与の一部を掛け金として拠出し、そこに、企業がマッチング拠出で上乗せ拠出する制度になっている。そして、運用指図は加入者である従業員が行って長期に掛け金を運用することによって老後に大きな資産を残すことに成功している加入者が続出している。米国には「401kミリオネア(億万長者)」といわれる退職時に100万ドル(約1.5億円)を超える資産を「401k」制度を使って実現している人が数十万人も誕生している。これらミリオネアは、ごく一般の会社員が給与の10~15%程度を拠出し、30年間超の期間にわたって積み立てた結果だ。主に、株式に投資する投資信託で運用して資産を増やしている。
米国では企業型としてDC制度が普及することによって、DC制度の資産形成で肝心の投資教育や運用のアドバイスの部分で、従業員教育や社内ネットワークでフォローされる効果もあり、多くの従業員が株式投資信託を積極的に運用に取り入れて大きな資産を作ることに成功している。日本においては、企業型DCへの加入者数は約805万人(2023年3月末)で上場企業等の大企業を中心に約4.7万社で採用されている。ただ、日本の国内には従業員が299人以下の中小企業が多く、2022年9月1日時点で約263万事業所に約2285万人が就労している。これら中小企業では退職一時金制度のみで退職年金制度がある企業が少なく、特に、従業員数99人以下の企業では退職給付制度がない企業の割合が2018年の22.4%から2023年に29.5%に増えているという実態もある。中小企業向けの退職給付制度の普及が課題になっている。