「耳からネズミが化けて出てきて それと対戦していた」金属バットで友人の頭が平らになるまで殴り続けた 覚醒剤使用で不起訴処分から一転、男は法廷に立った
これまでの取り調べでは供述していなかった「ネズミ」の存在を法廷で初めて明らかにした男。事件直後の取り調べについては「幻覚とか、幻聴とか過去の経験に左右されてしまった」と繰り返した。 男には「責任能力」があるのか。3人の医師が証人として法廷に立った。 ■最後まで対立した主張 医師たちは男の犯行について、「幻聴の内容を踏まえて、男自身が、反社会的で暴力的な性格に基づいて殺害を決めた」という点では共通していた。「ネズミ」の存在については、1人の医師は「虚偽の供述」であると指摘、2人の医師も極めて唐突かつ、不自然であると述べた。 一方、Aさんらが自分に危害を加えようとしているという「被害妄想」への男の「確信度」の程度については意見が異なり、「幻覚妄想状態が犯行にどの程度影響したか」については意見が分かれた。 結審の日。検察側と弁護側の主張は、やはり対立した。 【検察側】 ▽Aさんを殺害することにしたのは、男の反社会的(アウトロー)な性格に基づく判断・選択によるものである。犯行には、正常な精神作用により判断した部分が残っていた。(=男は心神耗弱状態である) ▽犯行様態は、Aさんに対する強い殺意に基づく残忍なもので、厳しい非難に値する。 →懲役9年を求刑。 【弁護側】 ▽明らかに死んでいるのに殴りつけるのは幻覚に支配されていたためであり、犯行動機は了解不能。 ▽事件時、男は幻覚、幻聴、妄想に支配されていて、Aさんを死亡させるつもりで事件に及んでいたわけではない。 →無罪が妥当であると主張。 男は最後に「Aのご冥福とご遺族へのお悔やみを申し上げます。これまでに迷惑をかけてきた皆様に申し訳ございませんでした」と述べた。 ■「反社会的な性格に基づく選択」 2024年5月25日、判決の日。 裁判長は「公判での供述は信用できず、犯行直後での供述が信用できる」とし、(1)殺意の有無、(2)責任能力の有無について以下のように認定した。 「被告人は覚醒剤精神病の症状である幻聴等の影響により、被害者らが自分を殺そうとしていると疑い本件犯行に及んでおり、同精神障害は犯行動機の形成に直接的な影響を及ぼしているが、被告人は被害者を殺さなければ自分が殺されると確信していたわけではなく、被告人が被害者を金属バットで殴打したりしたのは、被告人の反社会的な性格に基づく選択であったと認められることなどからすると、被告人が心神喪失の状態であったとの疑いは残らず、心神耗弱の状態であったと認める」