スキージャンプ髙梨沙羅と行くパラオ、気候変動危機の最前線に迫る【大統領インタビューも実現】
<300以上の島々から構成される群島国家パラオでは今日、観光や開発による環境破壊に加えて、暴風雨や高潮をはじめ気候変動の負の影響が現れている。パラオの生態系の貴重さや気候変動の具体的な影響、日本の協力について、現地を訪れた髙梨沙羅さんと学ぶ>
※当記事は「JICAトピックス」からの転載記事です。 降り注ぐ太陽、青く澄んだ海、そして豊かな自然──。「太平洋の楽園」と称される一方で、気候変動の影響を大きく受けるパラオ共和国を、スキージャンプ選手の髙梨沙羅さんが訪れました。気候変動対策の現場を巡り、携わる人々の想いに触れる中で、髙梨さんはどのような気づきを得たのでしょうか? 【動画で見る】髙梨沙羅さんと学ぶパラオの気候変動アクション
<美しいだけじゃない サンゴやマングローブの重要性とは?>
「実際に近くで見ると、海の透明度が素晴らしいですね。森の自然もとても豊かで、犬や他の動物も人と共に自由に暮らしているような、明るい雰囲気を感じます」。現地に降り立った髙梨さんは、初めて見るパラオの風景に目を輝かせます。 パラオは、沖縄本島から南におよそ2千キロに位置し、300を超える島々から構成される群島国家です。サンゴ礁やマングローブなどの美しく雄大な自然に貴重な生態系が分布しており、数百の島々からなるロックアイランド群と南ラグーンは世界複合遺産にも登録されています。
「パラオには非常に多様な種のサンゴが生息しており、ハードコーラルは約400種、ソフトコーラルは約300種もあります。そしてそこには魚や海藻をはじめとする何千種類もの海洋生物が暮らしています」。国際サンゴ礁センター暫定CEOのキャリン・ルコン・コシバさんは、パラオの生態系の貴重さを髙梨さんにそう話します。 近年パラオでは、観光や開発による環境破壊に加えて、海水温上昇によるサンゴの白化現象など気候変動の負の影響が現れています。国際サンゴ礁センターは、1998年に起こった大規模なサンゴの白化を契機に、2001年に日本の協力で設立されたサンゴ礁研究の拠点です。サンゴ礁の生態系の保全のために、サンゴ礁のモニタリングや、パラオの内海の一部に生息する、高い海水温でも白化しにくいサンゴの生態研究などを進めています。
<「何か一つ欠けてもダメ」>
コシバさんは、サンゴ礁だけではなく、サンゴ礁からマングローブに至るまでの沿岸生態系(エコシステム)全体の保全が非常に重要だと話します。「サンゴやマングローブは、高波や津波の被害を防ぐ防波堤・防潮堤の役割を果たしています。また、マングローブの根は、土砂の流出による堆積物からサンゴを守ってくれますし、マングローブの葉は、水に落ちて分解され、マングローブに住むカニや他の小動物の餌になります。そして、私たちパラオの人々はそこで育った魚介を食べて暮らしています」。 コシバさんの話を聞き、「サンゴだけではなく、マングローブや、そこに生息する魚も含めて全部が生態系として大切で、何か一つ欠けてもダメなんですね」と髙梨さん。沿岸生態系の重要さと、パラオの人々がそこから受けている恩恵に、想いを巡らせているようでした。