スキージャンプ髙梨沙羅と行くパラオ、気候変動危機の最前線に迫る【大統領インタビューも実現】
<カヤックツアーでマングローブエコシステムを肌に感じる>
マングローブエコシステムの重要性を身をもって知るため、髙梨さんはカヤックでマングローブ林を巡るエコツアーに参加しました。このエコツアーは、バベルダオブ島東部のニワール州にJICAが協力して開発を進めているもの。マングローブエコシステムの保全のため、JICAはマングローブ林のモニタリング体制の構築とその重要性を啓発する教育活動に協力しており、エコツアーもその一環で行われています。 「エコツアーのガイドとモニタリング活動は、地域のレンジャーたちが担っています。州の人口は200人ほどですが、これまで20人近くがエコツアーガイドになるための講習を受けており、今後もその数を増やしていきたいと思っています」そう話すのは、JICA専門家の板垣佳那子さんです。
<大統領に聞く、パラオの脱炭素の取り組み>
「レンジャーはどのような調査を行なっているんですか?」という髙梨さんの質問に対し、「保護区内のマングローブの状態を把握し、健全な生態系を維持・管理していくために、マングローブの樹種や倒木の調査、幹の太さの測定などを行なっています」と板垣さん。 「マングローブは、熱帯雨林の3倍以上炭素を貯留することができると言われていて、気候変動対策としても非常に重要な生態系なんです。国際サンゴ礁センターとも連携して、エコツアーで子どもたちにマングローブエコシステムの面白さと重要さを伝える活動もしています」
<大統領へのインタビューが実現! パラオの脱炭素の取り組みとは?>
これまで、気候変動の影響に適応するための取り組みをたどってきた髙梨さん。気候変動自体を緩和するための「脱炭素」の取り組みについても話を聞くため、スランゲル・S・ウィップス・ジュニア・パラオ大統領へのインタビューが実現しました。ここではそのインタビューの一部をご紹介します。 髙梨さん 太平洋の島国であるパラオは気候変動の影響を特に受けやすいのかなと思いました。具体的にどのような影響が生じていますか? ウィップス大統領 直接的な影響として、暴風雨と高潮が挙げられます。以前は来なかった大型台風で学校や家屋が破壊されており、高潮でもパラオの東海岸全体が被害を受けました。また、海面上昇によって、タロイモの生育地(湿地帯)に海水が入って塩害が生じています。さらに海水温上昇の影響で、クラゲと一緒に泳ぐことができる「ジェリーフィッシュレイク」のクラゲの数も減っています。 私たちは主要産業である観光に依存しており、また主食であるタロイモにも依存しています。嵐や高潮で破壊されるたびに再建しなければならないとなると、私たちの生活は後退してしまいます。 髙梨さん 聞くのも辛いお話です。パラオにとって脱炭素が重要な理由を改めて教えてください。 ウィップス大統領 私はいくつかのCOP(気候変動枠組条約締約国会議)に出席してきましたが、最初に出席したCOPで「(気候変動を傍観して)我々がゆっくり苦しみながら終わりを迎えるのなら、今終わらせるためにいっそ爆弾を落とせ」という声明を出しました。気候変動の影響は緩慢な「死」のようなものだからです。二酸化炭素の排出量を削減するために、再生可能エネルギーの使用や輸送エネルギーを使用しない地産地消の選択など、誰もが決断し、役割を果たすことが必要です。