三菱財閥旧岩崎邸 文明開化に現れた洋風住宅は“強い女性”のメタファー
消える「和」と残る「和」
しかし「和風」が消えたわけではない。 現代建築にも、庇、格子、障子、簾など、建具的な要素が空間を柔軟に仕切る道具として使われ、家具、内装などに「和モダン」という感覚が広がっている。隈研吾という建築家はそこを突いた。俗に「和の巨匠」と呼ばれているようだ。 文化を固定的に考えてはいけない。日本文化は常に変化している。もともと「和様=和風」とは「唐様=中国風」が日本に和(なご)んだものを指す。 ル・コルビュジエなどに見るようなモダニズムの変革エネルギーが一段落した現在、日本建築界を達観すれば、洋風も近代も、おしなべてこの列島に和んでいくことを感じる。 そう考えれば、日本から「和風」が消え去ることはないのだ。 たとえどんなに女性が強くなったとしても。 戦後、岩崎邸はGHQに接収され、日本における諜報部門キャノン機関の本拠地となった。そして対ソビエト政策において、社会活動家でもあった作家をここに監禁し、二重スパイとなることを強要したのである。 三菱に代表される大財閥は、明治維新によって生まれ、太平洋戦争によって解体され、経済成長によって再び力をもつに至ったのだが、昨今の三菱系企業の不祥事を見るにつけ、そろそろ賞味期限を感じないこともない。