「運動ギライが筋トレ始めた」きっかけは世界的アイドル? ダイエットにも〝推し〟が効く医学的な理由
「面倒くさい」を超える“推し”
では、運動が好きになれる人と、そうでない人を分けるものは何なのでしょうか。「面倒くさい」といったネガティブな思考を超えて行動に移すポイントが「主観的な楽しさ」だとする研究(※)が、2022年2月に発表されました。 この研究は広島大学精神神経医科学の香川芙美さんらのグループによるもの。個人の客観的な身体活動量と、その主観的な楽しさの関連を明らかにした上で、日常生活の行動特徴との関連について検討しました。 その結果、運動の楽しさの感じ方には個人差があり、活動の量ではなく「主観的な活動の楽しさ」のような活動の質が個人の思考・行動パターンの改善に大きな影響を与えることがわかったのです。 つまり、運動をたくさん行ったからといって思考・行動パターンが改善されるわけではなく、楽しんで運動をすることが重要というわけです。 ※Decreased physical activity with subjective pleasure is associated with avoidance behaviors - Sci Rep. 2022 Feb 18;12(1):2832. そのため、冒頭の友人のBTSの例のように、運動自体が楽しくなくても、“推し”の力を借りる=運動に自分が楽しめるような付加価値をつけることで、運動を楽しく行うことができる可能性があります。 かつてはアイドルファンなどの間で使われることが多かった“推し”という言葉ですが、現在は流行語にもなっています。「推ししか勝たん」などのフレーズは、今や普通に使われる言葉です。 ここで、“推す”の原義的なアイドルや、マンガやアニメなどのキャラクターのファン活動を考えてみます。ポイントは「好き」が高じれば、「面倒くさい」という心理的ハードルを超え、たとえ忙しくても時間を作ってその活動をするようになる、ということです。 今やYouTubeにはたくさんの「筋肉系」「フィットネス系」YouTuberがいて、まさしく推されています。Instagramでは、いわゆるインフルエンサーたちがトレーニングの前後や、最中の姿をアップする姿をしばしば見かけることでしょう。個人が推し、推される関係の中で継続して発信できるシステムができ上がっているのです。