私大入学者の過半数を超える安易な「年内入試」、総合型選抜や学校推薦型選抜が広まる傾向への疑問符
(安田 理:安田教育研究所代表) ■ 国立・私立で大きく違う選抜方法による入学者比率 【グラフ】学校推薦型選抜の種類と国公立、私立大学別の内訳 大学入試というと、イコール一般入試のイメージだろうが、今は「年内入試」での入学者が過半数を超えるまでになっている。そして特に問題視されずにこの傾向が続いているので、本稿では少し立ち止まって考えてみたい。 まず、文部科学省が調べた国立大学・公立大学・私立大学ごとの選抜方法別入学者の比率(別掲【グラフ1】参照)を見てみよう。2024年度の入学者はまだ調査が終わっていないので、数字は2023年度のものである。 このグラフを見ると、国立大学・公立大学・私立大学で大きく比率が違うことに気付くだろう。国立大学は一般選抜が約82%と圧倒的なのに対し、私立大学は約40%と半数を割っている。 一方、私立大学は「年内入試」と言われる総合型選抜と学校推薦型選抜で約60%にもなっているのだ。経年で見ると、一般選抜と学校推薦型選抜が少しずつ減り、総合型選抜が増えている。なお、国立大学でも総合型選抜・学校推薦型選抜の比率が高い大学もある(東北大、筑波大などは約30%)。 >>【グラフ】学校推薦型選抜の種類と国公立、私立大学別の内訳
■ 「総合型選抜」「学校推薦型選抜」とは何か 知らない読者もいると思うので、まず総合型選抜、学校推薦型選抜について説明しておこう。 ■総合型選抜 学校側が入学時に求めている学生像(アドミッション・ポリシー)を基準に合否を決める、旧AO(アドミッション・オフィスの略)入試に該当する。AO入試がきちんと学力を担保していなかったという反省から、提出書類や面接、小論文、プレゼンテーションなど何らかの形で学力を見るように変わった。基本、学校長の推薦は不要。9月1日以降に選考が始まり、合格発表は11月1日以降と決められている。国立大学や難関私立大学では高いレベルでの探究学習への姿勢やその成果を求められるが、AO入試と変わらず入学者確保に使っている私立大学も多数あるのが現実。 ■学校推薦型選抜 学校推薦型選抜には公募制と指定校制の2種類ある。名称の通り学校長の推薦が必要で、出願条件として評定平均値が定められていることが多い。高校の学習状況や課外活動など日ごろの努力を評価するほか、小論文や面接を課す場合も多い。付属校・系属校からの進学もこの分類に入る。選考期間は9月~12月。 学校推薦型選抜の内訳も見てみよう(別掲【グラフ2】参照)。 国立大学・公立大学は公募制推薦がほとんどで、私立大学も公募制が最多ではあるが、付属校、指定校制も多いことが分かる。このように入学ルートは国公立大学と私立大学では大きく異なる。