「きつかったね、ごめんね」「家族団らんの時を過ごしたかった」熊本県の警察官過労自殺訴訟や旧優生保護法訴訟で勝訴した原告側に得たものは 2024年の熊本県内の裁判
2024年に熊本県内で起きた裁判について振り返る。旧優生保護法の熊本訴訟や自殺した警察官の遺族による裁判について取材した。 【画像】強制わいせつ致傷罪に問われた元警察官の被告の証言
警察官過労自殺訴訟では原告が全面勝訴
2017年に自殺した玉名警察署の警察官の遺族が、「常軌を逸する長時間労働が自殺の原因」として県に対し損害賠償を求めた裁判。熊本地裁は遺族の訴えを全面的に認め県におよそ6200万円の賠償を命じた。 母・美智代さんは「遺書の中に『疲れたので休みます』と書いてあった。死ななければゆっくり休めないほど、追い詰められていたことを証明できた。『きつかったね、ごめんね』という気持ちでいっぱい」と言葉を振り絞った。 原告代理人の光永享央弁護士は「判決文から裁判所の県に対する怒りがにじみ出ている」と、地裁の判決を評価した。
熊本訴訟では係争中に原告亡くなる
旧優生保護法をめぐり障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが、国に賠償を求めた裁判。7月に最高裁が『違憲』と判断し、国に賠償を命じた。 これを受け政府と原告団の和解が成立、渡邊數美さんと70代の女性が原告となっていた熊本訴訟も先月、和解の日を迎えた。 三角恒弁護団長は「丸6年近くこういう形で裁判をやってきて、ようやく解決の場を迎えることができた」と述べた。 原告の女性は「私の一生の中で、神様が1日だけ願いをかなえてくれるなら、子どもや家族と普通に話をしたり普通に食事したりして団らんの時を過ごしたかった」と、裁判を終えての気持ちを述べた。 その一方で、渡邊さんは2024年2月に亡くなっていて、和解を見届けることができなかった。
警察官による強制わいせつ致傷事件
こうした中、12月9日から始まった強制わいせつ致傷事件の裁判員裁判で、警察官による卑劣な犯行が明るみに出た。 裁判で被告の元警察官は「その日、交番に着任した新人の男性警官からの事前のあいさつがなくイライラしていた。また、仕事が溜まっていたことなどもあり、性的欲求を抑えられなかった」と述べた。 起訴状などによると49歳の元警察官の男の被告は、2023年2月、当時、勤務していた県内にある交番の仮眠室に部下の20代の女性警察官を呼び出し、布団に招き入れ、胸や下半身を触るなどわいせつな行為をして、けがをさせた罪に問われている。 PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され、現在も休職中だという女性警察官は法廷で「信頼していた上司に裏切られた。憧れていた警察の仕事が2年近くできず、悔しい」と、悲痛な胸の内を語った。 検察側は「交番内にいた男性巡査に車で寝るよう指示し、被害者と2人きりになれる環境をつくるなど犯行は計画的だった」と指摘、懲役3年6カ月を求刑。一方、弁護側は懲戒免職になるなど社会的制裁を受けているとして執行猶予付きの判決を求めた。 熊本県警は今回の事件について「逮捕事案ではない」として公表せず、懲戒免職処分についても『被害者保護』を理由に明らかにしていなかった。 また、熊本地裁も『被害者保護』を理由に被告の名前を伏せて裁判を進めている。注目の判決は12月16日に言い渡される予定だ。 (テレビ熊本)
テレビ熊本
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