ひとりで暴言をまき散らし、時には虚無に…「複雑性PTSD」と診断された筆者が悩み続けた「自分とのつきあい方」
複雑性PTSDの当事者として
---------- 突然だが、あなたは「複雑性PTSD」という精神疾患を知っているだろうか。私自身、この病名に辿り着くまでに、15年以上の月日を費やした。複雑性PTSDだと分かる前、私はどうやっても心の舵が取れない自分に悩み、死ぬために生きているだけだった。 この病名を知らず、似た感覚に苦しんでいる人がもしいるなら、ひとりでも多く専門家での治療に繋がってほしい。そんな思いから、私が長年見ていた「複雑性PTSD当事者の世界」を綴る。 もちろん、症状の出方には個人差があるため、私が見ていた世界はすべての当事者に当てはまるとは言えない。また、寛解に向かう治療法も様々であることあらかじめ理解していただき、ひとつの参考例として知っていただけたらありがたい。 ---------- 【写真】元ヤングケアラーの36歳女性に同僚が放った「残酷なひとこと」 複雑性PTSDは、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と混合されやすいが、双方の発症原因や症状には違いがある。 PTSDは震災や性被害など、命の危機を感じる圧倒的な恐怖体験をした後に起きやすいとされており、フラッシュバックに苦しめられることもある。 対して、複雑性PTSDは持続的な虐待やDVなどのトラウマ体験をきっかけとして発症すると言われており、フラッシュバックに加えて、感情の調整や対人関係に困難が生じるなどといった支障も見られる。
「普通でいられない私」を責める
複雑性PTSDという診断項目は、2018年に公表された国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)で新たに採用されたばかりで、有効な治療法は、まだ手探りだ。 そのため専門書や当事者の体験談も、まだ少ない。いわゆる「毒親」のもとで育ち、何らかのトラウマを抱えているという自覚があっても、自分が複雑性PTSDであることに気づかず、「普通」でいられない私を責めてしまう当事者は多くいると思う。 私も、そのひとりだった。心がおかしいのは、自分の努力や我慢が足りないからだと、ずっと思っていた。 できるだけ人には頼りたくない。カウンセラーと呼ばれる人たちにも心を明け渡したくない。そもそも、専門家すらも信じていない。そう思っていた私がカウンセリングに通う決意をしたのは、不眠で体調を崩すようになったからだ。 パートナーが寝室に来てくれないと眠れず、心臓がドキドキする。そのうちに、「寂しい」という気持ちでいっぱいになり、過呼吸になるほど泣けてくる。そうやって泣いていると、「今すぐ死にたい」という気持ちで心がいっぱいになり、自宅前の車道に飛び出したくなってしまう。 自分でも、なぜそうなってしまうのか分からないが、「眠れない→寂しい→今すぐ死にたい」という思考回路が、夜ごと出来上がってしまっていた。