「旧耐震の建物だから危険」は早計 築古マンション購入時にチェックすべきこと
マンションの価格高騰が止まらず、都心のマンションを中心にバブル期超えの最高値を更新している。しかしその中でも、資産性を維持できる「選ばれるマンション」と資産性を落とす「選ばれないマンション」の物件格差がかつてないほど広がっているという。本稿では、築古マンションの購入時にチェックすべきポイントについて、書籍『マンションバブル41の落とし穴』より紹介する。 【解説】都心のワンルーム物件が初心者に向いている理由 ※本稿は、長嶋修著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
旧耐震基準で建てられたマンションは絶対避けた方が良い?
築年数が40年を超えるような築古マンションは敬遠する人が多いでしょう。その理由の筆頭として挙げられるのは、耐震基準です。 日本では、大きな地震が起こるたびに建築基準法の耐震基準が見直されてきました。もっとも大きく変わったのは1981年で、1981年5月31日までに適用されていた耐震基準は「旧耐震基準」、それ以降に適用されている基準は「新耐震基準」と呼ばれています。その後、2000年にも基準の見直しがあり、新耐震基準をさらに補強して、地盤調査の規定の充実などが盛り込まれました。これを「2000年基準」と呼びます。 1981年6月以降に建築確認を受けた建物から新耐震基準が適用されていますが、マンションの場合、建築確認を受けてから実際に完成するまでに1年以上かかるので、1982年の夏~秋以降に建った物件であれば、新耐震基準を満たしている可能性が高いでしょう。 旧耐震基準の建物は、震度5程度までの中規模な地震に耐えられるように設計されています。よって、震度5強よりも大きい地震になると、致命的な損傷を受けるリスクがあります。一方、新耐震基準の建物は震度6~7の大地震に耐えられるように設計されており、旧耐震の物件よりも大幅に強度が上がっています。 実際、1995年1月に発生した阪神淡路大震災で甚大な被害を受けた建物の約9割は旧耐震のもので、新耐震の建物の被害は限定的でした。2024年1月の能登半島地震でも、耐震補強がされていない古い木造家屋の倒壊が目立ちましたし、7階建てのビルも倒壊していますが、このビルは1972年竣工の旧耐震の建物だったそうです。 これらの事実を踏まえると、最低でも新耐震以降の基準で建てられた物件のほうが安心ということになりますが、旧耐震基準の時代に建てられた物件のなかにも新耐震並み、もしくはそれ以上に頑丈に作られた建物はあります。また、旧耐震でも耐震補強工事を済ませており、新耐震並みに安全性能を高めているマンションもあるため、十把一絡げに「築古=旧耐震の建物だから危険」と認識するのは早計です。 一方、耐震診断を受けるには費用がかかるうえに、診断の結果で大規模な改修が必要となったとしても、修繕積立金が積み上がっていないケースも多いことから、診断自体受けていない旧耐震マンションも数多くあるのが実状です。 築古物件は都心部に近い好立地に位置するものも多いため、「新築は無理でも、築古の物件なら買えそう」というケースはよくありがちですが、検討する際には耐震診断を受け、耐震改修済みの物件であるか否かを確認しましょう。安いという理由だけで、旧耐震の耐震改修工事をしていない(する予定もない)物件を買うのはNGです。 なお、旧耐震のマンションは資産性が低いと判断されがちなので、住宅ローンを組んで買う場合、金融機関のローン審査を通過するのが難しくなります。以前は、住宅ローン控除も適用不可でしたが、「耐震基準適合証明書(新耐震基準に適合していることを証明する書類)」があれば、控除を受けられるようになりました。 ちなみに、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」は、金融機関の耐震評価基準とは異なる基準を採用しているため、旧耐震の物件を買うときでも借りられる場合がありますが、その際にも耐震基準適合証明書の提出は必要になります。 鉄筋コンクリート造の建物の寿命は100年とも言われるので、全面的に建て替えなくても適切に管理していれば、性能的には築100年経っても住み続けることは可能です。 「マンションの法定耐用年数は47年」と言われることもありますが、これは減価償却の計算に使われる数字なので、マンションの寿命というわけではありません。耐震改修工事をきちんとして、その他の設備も定期的に点検・修理しておけば、築古でも安全に住める状態をキープできます。あくまで管理次第です。 とはいえ、築100年以上経過しているマンションは日本に現存していません。日本では大正時代(1920年代)から「同潤会アパート」に代表される共同住宅の建設が始まり、1953年にはもっとも古い分譲マンションである「宮益坂ビルディング」が竣工しました。しかし、今挙げたアパート・マンションはすでに解体され、新しいマンションなどに建て替えられています。 それ以降に建てられ、現時点で築50~60年経過しているマンションはたくさんありますが、そのなかにはいまだに管理が行き届いて高い資産性を有している物件もあれば、廃墟同然となっている物件も。その違いは、長年の管理の差によって生じています。