「旧耐震の建物だから危険」は早計 築古マンション購入時にチェックすべきこと
建物は築年数とともに価値が低下していく?
建物の資産価値は、時間の経過とともに下がっていくのが普通です。木造の戸建住宅は築20年以上建つと、価値がほとんどゼロになると言われています。まだまだ住むことができる住宅の価値をゼロとしていること自体、課題ではありますが、築古の戸建住宅の売買価格のほとんどは、土地の価格で売却されています。 一方、マンションはまた事情が違います。管理状態が良い好立地物件であれば、築年数が多少古い物件でも新築時より値上がりしています。 このような物件を購入できれば、何年後、あるいは何十年後かに売却する際、元の買値より高く売ることもできるでしょう。仮に5000万円で買った物件を20年後に7000万円で売却できたとしたら、諸経費などは差し引かれるものの十二分に利益を得られますし、その物件に住んでいた20年分の住宅費を無料にできたことにもなります。 それでは、どんな物件なら値上がり、もしくは価格の維持を見込めるのでしょうか。キーワードとなるのが「管理力」です。最近では管理力に目を向ける買い手が少しずつ増えており、管理計画認定制度やマンション管理適正評価制度を活用して、管理力を対外的にアピールできているマンションは、資産性が高まりやすくなっています。 その好例が神奈川県川崎市のパークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワーです。パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワーは2009年竣工。タワマン密集地であるこのエリアにおいて比較的早期に建った物件です。 パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワーの管理組合は「100年安心計画」を掲げ、100年間にかかる修繕支出を網羅した長期修繕計画を策定しています。後々負担になりがちな機械式駐車場のメンテナンス問題にも早めに対応。ほかにも金融商品への投資や駐車場の外部貸しといった収益事業を手掛け、管理組合が「稼ぐ」ことに注力しています。 管理計画認定制度の認定を取っていますし、マンション管理適正評価制度では最高評価にあたる5つ星に輝いています。さくら事務所では中古マンションの管理力をプロが厳しく審査した物件を掲載するマンション取引サイト「BORDER5」を運営していますが、BORDER5にも管理良好マンションとしてセレクトされています。 こちらの管理組合は広報活動にも積極的で、管理組合がマンションのオリジナルサイトを立ち上げ、継続的に運用するスキームも構築し、自分たちのマンションでどのような管理が行われているかを、こまめに情報開示しています。 管理費・修繕積立金がどれくらい貯まっているか、この先の修繕計画の見通しや履歴など、マンションの管理の状態を記載する資料を「管理に係る重要事項調査報告書」と言います。不動産仲介業者は中古マンションの売買にあたって、この報告書を管理会社から取り寄せますが、パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワーでは管理に係る重要事項調査報告書も独自に作成しています。 管理に係る重要事項調査報告書は基本的に統一フォーマットがあり、そのなかに数字などを書き込んで作成していくので、どんなに良い取り組みをしていて管理に自信があったとしても、統一フォーマット上では違いをアピールするのが難しくなります。 しかし管理組合でオリジナルの報告書を作成すれば、時系列で自分たちの行ってきた取り組みを列挙し、魅力を存分に伝えることができます。不動産仲介業者も、物件のセールスポイントをつかんで販売サイトの説明文を書きやすくなるでしょう。こうした努力がほかの物件との差別化につながり、早く、高く売れることに直結していくのです。 実際、竣工から15年経ちますが、2024年時点で新築分譲時より価格が約5割増しになっていますし、同エリアの築浅のタワマンにも負けない価格帯を維持しています。 もっと築古の物件でも、価値を維持、場合によって上昇させているケースもあります。東京・渋谷区広尾の広尾ガーデンヒルズは、竣工1987年で築40年近くにもなりますが、いまだに分譲時を超える価格で取引されています。 こちらのマンションもオリジナルのサイトを運営し、SNSを駆使しながらマンションの魅力を発信し続けています。昔から芸能人などが住んでいてステータス性がありますが、それ以上に住みやすさが知れ渡り、人気を底支えしているのでしょう。管理に自信があり、広報発信力もあるマンションは、相場より1~2割高く売れる可能性があるのです。
長嶋修(不動産コンサルタント),さくら事務所